質問と回答 (採点対象) 追加

第2回 (4月19日)

5月10日に2回目の授業の質問がでました。

ホームページで公開不可、とは書いてなかったので、掲載しました。 (掲載に関して間違っていたら至急連絡して下さい。) 下線の上に私の回答があります。


質問. (採点結果: 4点)

8.1 (i) 自由度について: 「回転の自由度3(非直線分子の場合) 又は2(直線分子の場合)と書いてありますが、 それはどういうことか分かりません。 振動の自由度についても同様です。

回転の自由度については、2原子分子だけ説明しましたね。 その場合、自由度が2になるのは、 シーターとファイの2つの変数で回転が表せるからです。 このことは、直線状の分子であれば、3原子以上であっても同じです。 直線でない場合にはさらにもう1つ変数が必要です。 教科書のアニメ が分かりやすいかもしれません。

振動については、重心の並進運動と回転運動の残りの自由度になります。 N個の原子からなる分子を考えると、全部の自由度は3次元で3N個です。 並進運動は3次元なので、直線分子ならば、 並進の3個と回転の2個を除いて、3N-5が振動の自由度です。 直線分子でない場合も同様に考えて3N-6になります。


(ii) (8.2)式について: なぜ Z(T,V,1) は V(2mkBT/h2)3/2と j(T) のかけざんで書けますか。

独立なものは積で書けるというのはカノニカル分布の特徴です。 他の分布、例えばミクロカノニカル分布は、そういう性質はありません。 ただし、ここでいう「独立」の意味はハミルトニアンが和で書けるという意味です (注*)。 今の場合、 全体のハミルトニアンは、重心の並進運動と分子の回転運動の和で書けるので、 独立と言えます。 そしてカノニカル分布を例えば、教科書のP54の(4.7)式とかP56(4.18)式に従って、 きちんと計算すると確率も積で書けるし、分配関数も積になることが分かります。

注* こう書いた後で、幾つか例外も見つけました。 古典力学が成り立つ場合は完全にこういえますが、量子効果が聞くと、 フェルミ粒子やボース粒子はそういえません。 和で書けても独立でない場合があります。


8.2 (i) 数学の問題: (8.5)の近似がなぜ(8.6)になるのか分かりません。 (但し、(式省略)となるのは分かります。)
その下に書いてあるオイラーマクローリンの公式もわかりません。 (これはマクローリン展開とは違うものですか?)

おそらくオイラー-マクローリンの公式が分かれば、(8.6)式も分かると思います。 オイラー-マクローリンの公式は、手元の教科書をいくつか探しても、 見つかりませんでした。 どなたか、載っている教科書を知っている人がいたら教えてください。 www では、 ここに あります。


(ii) 図8.1について: 高温の極限として T>>Θ として(8.6)を導いたのですが、 具体的に T/Θ の値はこの場合どのくらいですか? 図8.1をみてみますと、T/Θ>1 の場合が、 高温の極限のように見えますが、この場合は T/Θ>>1 ではありません。
高温の極限と低温の極限の間の値はどのように計算しますか? 数値計算ですか?

以前わたしも >> の記号を見ると、 どれくらい大きいのだろうと疑問に思ったことがあります。 人に聞いたら、「それは、君次第だ」と言われました。 つまり、どれくらいの精度が欲しいか、によるということです。 1%の範囲が欲しければ、温度がどれくらい高ければ良いか、計算できます。 1割でよければどれくらいと、また違う温度になるわけです。 今の場合は、図8.1を見ればある程度は分かります。 つまり、5%程で良ければシーターの温度で充分良い訳ですが、 もし1/1000ぐらい必要であれば、2倍のシーターでもまだ低すぎます。

それから、中間の温度は数値計算です。

どれも良いところをついている質問ですが、 ポイントそのものではなかったので、4点満点の3点を採点しました。 また、提出が遅れたので、6割の四捨五入しました。


戻る

戻らない

吉森明のホームページへ