質問と回答 (採点対象)

第3回 (10月21日)

この授業は質問を採点の対象にしています。 詳しくは、 ガイダンス P6を見て下さい。

ようやく第3回の回答が出来ました。 1ヶ月以上もたってしまって申し訳ありませんでした。

ホームページで公開不可、とは書いてなかったので掲載しました。 (掲載に関して間違っていたら至急連絡して下さい。) 下線の上は私の回答です。 また、提出したのに、載っていない人は、連絡して下さい。

ご本人の希望で各質問について採点結果を付けました(2006年1月15日)。


質問 1. (採点結果: 18点)

<質問1> 非平衡系を孤立系と見なして、ハミルトニアンで表現しましたが、 ハミルトニアンで表せないような系は、久保公式の証明ができないのでしょうか?
(0点: 採点基準 2)

これは、その次の時間に説明した事なのでもうお分かりだと思いますが、 孤立系でなくても証明できます。 ただ、孤立系での証明は歴史的な意味があり、また、1つの考え方として大事な面もあるので、 授業で扱いました。 で、結局説明がうまくいかなくて、その考え方を充分分ってもらえませんでしたね。 申し訳ありません。 ちなみに、確率過程での証明は大学院の授業でやります。

ただし、外場は、ハミルトニアンに含まれてないといけません(仮定2)。 前回の質問の回答でも書きましたが、とりあえずは、 外場が力学的なものでしか扱わないと思って下さい。


<質問2> リュービル演算子の分布関数への作用が、 分布関数の時間変化を表す事は、分布関数が連続の式(式略)でかける為に、 成立していると思うのですが、分布関数が連続の式で書けるという条件は、 仮定ですか?
(13点: 採点基準 2)

ここはあまり説明しませんでしたが、やはり分りにくかったようですね。 すみません。 連続の式と言うのは、実は、保存則と密接な関係があります。 私は、これでも昔、素粒子の理論の勉強をした事があるのですが、 そこでは、連続の式の事を保存則と呼んでいました。 この場合は、確率の保存と関係していて、位相空間のある領域の中にある確率は、 その領域の境界を通る流れだけで時間変化が決まると言うわけです。 例えば、流れがなければ、その確率も時間変化しません。 そのことを式で書いたのが、連続の式で、 したがって、確率分布が連続の式に従うのは、仮定ではなくて、 確率が保存すると言う事から導ける事です。


<質問3> 観測量は、分布の平均で表せると仮定しましたが、 系のエルゴード性も仮定しないと成立しないと思いますが、 エルゴード性も仮定しているのですか?

(0点: 採点基準 2)

この事については、私は通常の教科書と別の意見を持っています。 多くの教科書では

仮定A: 観測量は、時間平均と等しい。

と言う事が、何の断りもなしに、「仮定されて」います。 この仮定を認めると、

仮定B: 観測量は、分布の平均と等しい。

事が成り立つ為には、

仮定C: 分布の平均と時間平均が等しい。

が成り立つ事(エルゴード性)が必要です。 しかし、私は、最初の仮定Aは必ずしも必要と思っていません。 最も素朴に考えて、観測したデータがばらついたとき、 普通は何度も測って平均をとると思います。 時間を長く測って、平均を取る人はないと思います。 「いや、それは、ミクロな時間から見れば、測定の時間は、無限大で、 「普通に」測定をすれば、時間平均なんだよ、」と言う人がいますが、 そしたら、実験技術が進んで、ミクロな時間分解能で測定できるようになったら、 どうなるのでしょうか。 実際、いまの技術では、fs(10のマイナス15乗)の測定が出来るのようになっているのですが、 統計力学が破れたと言う話は聞いた事がありません。

したがって、私の意見は、平衡でも非平衡でも仮定Aは必要なくて、いきなり、 Bだけ仮定すれば良いと思っています。 その場合は、エルゴード性(仮定C)は成立しなくても構いません。

このような考え方は、実は私だけでなく 下記にも 詳しく書いてあります。

学習院大学 田崎晴明「統計物理学の基礎をめぐって」

<質問4> 時間相関関数を<X(t)X(t')>=ΣiXi(t)Xi(t')/Mとありますが、 軌跡の数 M はどのように表現されるかわかりません。

(5点: 採点基準 2)

まず、問題の式で、Mを無限大の極限をとるのを忘れていました。 すみません。 授業でも言ったかも知れませんが、閉じた系で初期条件を決めると、1つ軌跡が決まります。 したがって、軌跡を決めると言う事は、初期条件を決めると言う事と同じです。 結局、軌跡をどうやって決めるかと言う事については、初期分布に従って、 決めると言う事になります。 「表現される」という意味がもう一つ分りませんでしたが、 こんな感じで回答になっているでしょうか。


<質問5> <X(t)X(t')>=<X(t)><X(t')>としてしまうと、 答えが変わってしまい、やってはならない式変形になるのですが、 どうして、やってはいけないのか教えて下さい。

(0点: 採点基準 2)

一般に、ある確率変数AとBの平均<AB>が<A><B>と書けるのは、 AとBが独立の時だけで、相関があるときは、別々に平均を取る事は許されません。 X(t)とX(t')は、一般には、相関があるので<X(t)X(t')>=<X(t)><X(t')> は成り立ちません。

この日のポイントは、全部で 4 つですので、一つ 25 点の計算です。 <質問2>は、3番目のポイントと関係していて、しかも、分布関数の時間変化について、 かなり重要な質問だったので、半分の 13 点、 <質問4> は、最後のポイントと関係していますが、これ1つしかないので、5点としました。



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