質問と回答 (採点対象)

第1回 (4月25日)

2002年度の非平衡物理学では、 単に質問を授業に役立てるだけでなく、 採点をして成績評価の対象にする事にしました。 今回は、2人の方が質問をしてくれました。

ただし、1人の方は、授業開始後に提出されましたが、 締め切りは、授業開始(10:30)ですので、今後、締め切りに送れた場合は、 採点は0点になりますので、お気をつけ下さい。 今回に限り採点します。

以下に皆さんにして頂いた質問の内容と採点結果を書きました。 ホームページで公開不可、としたものは無かったので、 全員掲載しました。 (掲載に関して間違っていたら至急連絡して下さい。) 下線の上に私の回答があります。


質問1. (採点結果: 6点)

止まっていても受ける力をR(t)とおいたが、 t以外のパラメータに依存しない理由がわからなかった。

一応採点するので、質問を書くだけでなく、 どれくらい理解したか分かる様に、多めに書いて下さい。 この質問も本質的な所を突いているかも知れませんが、 文章が少ないので、どれくらい分かっているのか分かりません。 採点結果はそれが反映していると思って下さい。

t以外のパラメータとは、水分子の双極子モーメントとか、質量とか、 半径とか、そういうものでしょうか。 実際、水からの力は、そういうものに依存するはずなので、 それらのパラメータを含んでいないとおかしいわけです。 にもかかわらず、そういう微視的な情報を一切構わずに、 切り捨ててしまうのが、 ブラウン運動のモデルの本質といっても過言ではありません。 そんな風にしてしまったら、微粒子の運動を記述するなんて無理じゃないか、 思われるかもしれませんが、 これが案外うまくいくのです。 なぜうまくいくかは、多くの研究があり、 面白い話しがたくさんあるのですが、 それを話すのはとてもこの講義では余裕がありません。 ただ、水に関するすべてのパラメータを切り捨てている訳ではなくて、 ランダム力の相関に出てくるDというパラメータの中に、 後で説明しますが、温度が含まれています。 そう言えば、熱力学を勉強した人は分かると思うのですが、 熱力学も微視的なパラメータを、 温度に組み込んでいくようなところがありますよね。


質問2. (採点結果: 6点)

授業の最後の所、<R(t)R(t')>=Dδ(t-t')-@で Dの影響が殆どない理由と、 <V(t)>2=t0dt1 t0dt2<R(t)R(t')>=0-A ということで どういうことを示しているのかがわかりませんでした。 @式について、t≠tときは<R(t)R(t')>=0は良いとして、 t=t'のときに@式が<R(t)R(t')>=Dというのは、 δ(t-t')→∞ということに合いませんし、 δ→∞だからDの値は正の適当な値で良いとは言っても、 D=0にしないと、A式に@式を素直に代入すると <V(t)>2=t0dt1 D=Dt となってしまって、ゼロになりません。 おそらく上の文章の中でも全く単純で 基礎的な誤解をしているのでしょう。 正しく理解したいので、どうか教えて下さい。
これは、私の説明の不足が原因で起きた疑問ですね。 申し分けありません。 今日(5月2日)の授業でもう1度説明したので、もう分かったと思うのですが、 如何でしょうか。 <R(t)R(t')>=Dδ(t-t')というのを説明するのに、 敢えて違う式<R(t)R(t')>=D とおいて、 デルタ関数がないと具合が悪いということが言いたかったのです。 ですから、<R(t)R(t')>=Dδ(t-t')と<R(t)R(t')>=Dは、 当然、全然違う式で結果も違って当たり前です。 また、<R(t)R(t')>=Dから出発すれば、<V(t)2>=0ですが、 <R(t)R(t')>=Dδ(t-t')から出発すれば、おっしゃる通り0になりません。 ここでは、0にならない方が好ましいと考えて、 だからデルタ関数は必要だという風な流れにしたかったのです。 分かり難くて申し分けありません。

私の説明が悪いのと採点とは関係ありませんので、ご了解ください。 むしろ、最後に時間がなかった所を質問するよりは、 その日のメインの事柄について質問して頂いた方が点は高いです。



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