質問と回答 (採点対象)

第2回 (4月24日)

この授業は質問を採点の対象にしています。 詳しくは、 ここを 見て下さい。

配点の高さが効いたのか、3人の方が質問を持ってきてくれました。 とりあえず、2人の方だけ採点と回答を載せます。 残りの方は、今頑張って書いています。 もう少しお待ち下さい。

3人目の方の質問を載せました(5月12日)。 遅くなってすみませんでした。

ホームページで公開不可、とは書いてなかったので、掲載しました。 (掲載に関して間違っていたら至急連絡して下さい。) 下線の上に私の回答があります。


質問. (採点結果: 15点)

(ランジュバン方程式について、(線形の場合))
もし、R(t)がないなら、
dX(t)/dt = -γX(t)
となり、X(t)の変化がそれ自信に比例し、 不規則な要因が無いのがわかる。
R(t)を復活させてみると、 dX(t)/dt = -γX(t) +R(t)
このR(t)がX(t)と関係がなく振舞うとき、 X(t)には不規則な要因となると思う。
しかし、R(t)がX(t)に関係無くても、例えば定数だったりしたら、 このX(t)は不規則にならない。
=> R(t)はそれ自身が不規則でランダムなものでないといけない。
その条件
<R(t)>=0, <R(t)R(t')>=Dδ(t-t') <-こう定義する理由がわからない
例えば、
あるΔt=t-t'だけはなれた R(t)とR(t')の間に関係がないというのを表したい時には、 <R(t)R(t')>=Dδ(t-t')の代わりに
<R(t')-R(t)>=ΣNi (Ri(t')-Ri(t))/N=0
では だめなのでしょうか。
また、<R(t)R(t')>=ΣNi Ri(t)Ri(t')/N = Dδ(t-t')を見ると、 t=t'の時、
limt->t'(Ri(t)Ri(t'))->∞
となると思うのですが、それは正しいのでしょうか。

どれくらい理解しているか分かるように、 質問以外の部分もたくさん書いてくれました。 有り難う御座いました。 単に質問だけ書かれると、分かっているのかどうか、 不安になるので、たくさん書いてもらえるのは助かります。

なぜランダム力の相関関数がデルタ関数で、 たとえばt=t'でDのようにただの定数では駄目なのかは、次回説明したいと思います。 「デルタ関数は次回説明する」とは授業中にも言った気がするのですが、 如何でしょう。 しかし、ご質問のように、
<R(t')-R(t)>=ΣNi (Ri(t')-Ri(t))/N=0
というのは、<R(t')>-<R(t)>となって、<R(t)>=0から、 0になるのは新たに仮定する必要がありません。 この式が「R(t)とR(t')の間に関係がない」 事を表しているとは思えないのですが、如何でしょうか。

t=t'では、確かにRi(t)Ri(t')は発散します。 これは、N回の測定の間に必ず、 発散するRi(t)が得られるということです。 しかも、平均すれば0なので、 プラス無限代とマイナス無限大が同数出てきます。 力が発散というのは、激力を考えてもらえれば、分かり易いかもしれません。 力積を一定にしたまま、作用する時間を0にする極限をとると、 力は発散します。

採点ですが、目標の箇条書きの内1つの点についての質問だったので、 20点満点で採点しました。 5点ひかれているのは、
<R(t')-R(t)>=ΣNi (Ri(t')-Ri(t))/N=0
の部分が良く分からなかったからです。


質問. (採点結果: 40点)

○ 不規則と規則のきちんとした物理的な定義はないのでしょうか。 例えば、ものが動く時に同じ軌道を動いているけど、 速さは変わる運動は、直感的には規則的と思ってしまいます。 しかし、V(t)、R(t)で考えた時には、 測る度に別の値になりますが こういった場合は不規則になるのでしょうか。
○ プリント(5)の条件
<X(0)R(t)>=0 t≧0 についてですが、
水分子の中にものがあって動く時にものが動いたことによって、 水に流れができて、水分子も動きますよね。 そうするとX(0)というのはR(t)に影響を及ぼすと思うのですが。 この影響が小さくて無視できると 仮定できる場合にランジュバン方程式を つかえるという意味でしょうか。
○ ランジュバン方程式が使えるのは どのような現象か良く分かりません。 不規則な運動の時に使えるのでしょうが、 不規則な運動の定義も分かりません。 不規則という定義は、 プリントの(3)、(4)、(5)式が成り立つ時のような気がします。 しかし、「(3)、(4)、(5)が成り立つ条件のもとで、 (1)、(2)式が成り立つ」という表現ではなく、 「(1)、(2)式は(3)、(4)、(5)式を満たす」という表現になっているのは おかしい気がします。 そこのところを教えて下さい。

たくさん質問して頂きまして、有り難う御座いました。 しかも、それぞれほとんど完全に理解されているようで、 凄いと思います。

不規則なものの条件として、

  • 軌道がガタガタしている。
  • 同じ初期条件から始めても違う運動。 つまり予測できない。
という2つを授業中に挙げました。 このガタガタというのを正確に説明しませんでしたが、 いたるところ微分不能という意味にとって下さい。 つまり、任意の区間で微分が発散するということです。 こう考えると、御質問の場合は除外されます。 しかし、いたるところ微分不能の軌道だけれども、 速さだけが毎回違う場合はどうなのかという疑問が起こります。 この場合は、やはり規則的な感じがしますが、 上の2つの条件を満たしてしまいます。 そこで、この場合を排除するような定義をいろいろ考えてみましたが、 何だか御都合主義なような気がして止めました。 「不規則な運動」というのは、物理学辞典(培風館)にも載っていないし、 おそらく万人の人が納得する物理的な定義というものはないのでしょう。 もし、うまく定義できたら、教えて下さい。 ちなみに、プリントの(1)から(5)式を満たすランジュバン方程式は、 質問のような運動は実現されません。 なんかきちんとした回答になっていないかもしれませんが、 まだ納得できない時は、部屋まで来て下さい。 午後3時に来れば、コーヒーを出しますので、 飲みながら議論をしましょう。


2番目の質問もなかなか本質を突いていると思います。 おっしゃるとおり、そういう効果を無視できる場合にしか、 ランジュバン方程式は使えません。 その効果のことを非マルコフ効果といって、講義ではやりませんが、 良く研究されています。 ブラウン運動に非マルコフ効果が効くかどうか分かりませんが、 大きい効果を持つ系もたくさんあります。 しかし、ランジュバン方程式の基本的な思想は、

粒子は熱浴に影響しない

ということです。

最後の質問の不規則な運動については、最初の質問の回答のとおりです。 ただ、不規則な運動の定義をランジュバン方程式を使ってあえて言うなら、 「(3)、(4)、(5)式が成り立つ時」というよりは、 「(1)〜(5)式で計算されたX(t)と同じ振る舞いをするもの」 という言い方の方が良いかもしれません。 現象としては、X(t)しかない訳ですから、 現象を見てR(t)が(3)、 (4)、(5)式を満たすかどうかは分からないと思います。 したがって、表現についても、 (3)、(4)、(5)式を満たす(1)、(2)式を計算して、 それと同じX(t)を持つ現象に使えるといった方が私にはしっくりきます。 ランジュバン方程式と言うのは、あくまでもモデルなので、 成り立つ現象と成り立たない現象があるというのは、良いと思うのですが、 ランジュバン方程式の意味するところは、 (1)から(5)式まで1セットと考える方が分かりやすいと思います。

採点は、全部で3つ質問をして頂いたのですが、 5つある箇条書の内、 2つは完全に理解していると見なして40点にしました。


質問. (採点結果: 20点)

測定毎にランダム力が異なるという事でしたが、 ランダム力R(t)の原因は、例えばブラウン運動を考えれば、 水分子の衝突なのだから初期値が本当にまったく同じなら R(t)も同じになるような気がするのですが、どうなんですか。
この理論でR(t)が異なる原因は微視的に見た場合の 初期値が異なるためであり、 実際に実験するにはこの微視的な初期値を一致できないため、 R(t)が毎回異なり、 その平均<R(t)>は0であるべきとしていると思うのですが どうでしょうか?

これも鋭い質問だと思います。 というのは、この問題を考える事はより理解が深まると思って、 昨年までこの事をそのまま宿題にしていました。 毎年同じ宿題というのも良くないので、今年は止めたのですが、 ちゃんと質問してくれる人がいて、うれしいです。

ブラウン粒子といえど、ニュートン方程式に従っているので、 全ての粒子の初期値が同じであれば、当然同じ運動をします。 それでは、授業中に「初期値が同じでも微粒子は異なる運動をする」 と言ったのはどういうことかというと、 この質問の方が言っておられるとおりです。 「初期値が同じ」と言った時の主語が問題で、 この場合は微粒子の初期値が同じと言うわけです。 当然、水分子の初期値、 つまり、初期配置や運動量は、測定ごとに違っています。 これがランダム力の原因になるわけです。

ポイントの1つを完全に理科しておられるので、20点満点にしました。



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