名古屋大学集中講義「液体のダイナミックスと非平衡物理学」

アンケートの結果

大変遅れましたが、アンケートの集計を発表します。 このアンケートは、 2003年年9月30-10月2日に名古屋大学情報学科学研究科複雑系科学専攻 で行われた集中講義に対するものです。 アンケートに協力して頂いた受講生の皆様に感謝致します。

集計結果の後に下線を引いてコメントを書きました。 その下に書いてあるのは、アンケートにあった意見です。 ホームページで公開不可、としたものは無かったので、 全員掲載しました。 (掲載に関して間違っていたら至急連絡して下さい。) 下線の上に私の回答があります。

1. 講義のレベル(回答者数 14)

1:難しすぎる。 2:少し難しい。 3:少し簡単。 4:簡単すぎる。 5:適当。
2 8 0 0 4

「2:少し難しい。」が過半数を占めています。 「1:難しすぎる。」が2人もいて、 これは皆さん難しいと感じたようです。 初めての集中講義ということで、張り切りすぎました。 名古屋大学の学生さん達に申し訳ないです。 もっと長岡先生とよく相談して内容を決めれば良かったです。 事前に難しすぎないようにしてくれと始めに言われていたのに、 その忠告はまったく生かされませんでした。 すみません。


深く理解すると、キリがないと思ったので、 ある程度、自分なりに納得しながら聞いていたので、 ものすごく難しくてついていけないとは感じなかった。
有り難うございます。 確かにキリがないですね。 ただ、深く考えることも結構重要なので、 疑問に思ったことはどんなことでもどこかにメモをして、 後で、面白そうなものだけ考えるというのはどうでしょう。 考えるというのは、どこでも、電車の中でも道を歩きながらでも、 お風呂でも簡単にできるので、試してみて下さい。 しかも、日常生活でも役立ちますから、 考えるということは良いことずくめです。
2つ目の後半から、とつぜんツラクなりました。
それは申し訳なかったですね。 時間がなくなってきてしまったことと、 内容が皆さんの役に立つとは思えない自己満足的なことだったのが、 主な原因です。 内容をもっと考えるべきでした。

2. 速度と分量(回答者数 14)

1:内容を少なくしてもっとゆっくりして欲しい。 4
2:進度は速くして内容を多くして欲しい。 2
3:速度内容ともに適当。 8

「1.レベル」の質問で少し難しいという結果がでているので、 「1:内容を少なくしてもっとゆっくりして欲しい。」 が圧倒的に多くなるのだと思っていましたが、過半数行きませんでした。 しかも、「2:進度は速くして内容を多くして欲しい。」が2人もいるので、 あまり興味のない難しい内容に時間をかけすぎたという感じでしょうか。 やはり、内容をもっと考えれば良かったです。


想像していた以上にゆっくりやって頂いたと感じたので、 充分ついていけた。
有り難うございました。 どんな想像をしていたのか分かりませんが、 進む速度は適当だったようです。
非線形ランジュバン方程式のところで速くなったのが少し大変だった。
これも「1.レベル」のところと同じで内容に問題があったようです。
あまりつめこみすぎの内容ではなく理解しやすかった。
好意的なコメントを有り難うございます。 授業を行う立場に立つと、どうしてもいろいろなことをやりたくなり、 詰め込みすぎてしまうのですが、 受ける方はたまったものではありません。 ですから、少ない内容を深く分かってもらうために、 充分時間をとって説明しようと思ったのですが、 今回は、内容自体に問題があったようですね。

3. 内容(回答者数 14)

1:計算が多くてイメージしにくかった。 5
2:もっと考え方を説明して欲しい。 3
3:もっと基礎的な話が良い。 1
4:もっと実験の話が聞きたかった。 0
5:基礎よりも応用が知りたい。 1
6:最新の研究の話が聞きたかった。 0
7:理論が現象にどう使えるか知りたかった。 5
8:もっと抽象的なな話が良い。 0
9:今回は適当。 4

「9:今回は適当。」が4分の1程度しかありませんでした。 「1:計算が多くてイメージしにくかった。」は、 アンケートを作っているときにすでにこれを選ぶ人が多いと 予想していましたが、やはり5人もいました。 「7:理論が現象にどう使えるか知りたかった」も同じく5人いたのですが、 現象にどう使えるかを説明すればイメージしやすいので、 両方解決したかもしれませんね。 やはり自分の趣味に走りすぎました。


式には慣れたが、 深く意味を考えようとすると、理解しきれなかった。
この方は「1:計算が多くてイメージしにくかった。」 を選んでおられましたが、考え方をもっと説明すべきでした。 前半は割と考え方を説明したつもりですが、 後半は時間もなくうまくいきませんでした。 話題を2つにしたのが失敗で、理論を1つに絞り、 後半はその考え方と応用を中心に話せば良かったです。

4. 計算の詳細 (回答者数 14)

1: 計算の詳細はもっと省いて良い。 2
2: もっと詳しく説明して欲しい。 2
3: 説明しなくて良いからもっとプリントに載せて欲しい。 1
4: もっとプリントに載せて説明して欲しい。 6
5: 今回は適当。 4

「4: もっとプリントに載せて説明して欲しい。」が6人もいます。 やはり式は、とばしすぎでしょうか。 しかし、今までの経験から言って、 プリントに式変形を書いてもその場で理解する人はほとんどいません。 授業後に理解する人はもっと少ないので、 プリントに載せると式変形はやらないのと同じだと思います。 でも、もしかしたら板書でも理解できないことは同じかもしれませんね。 板書に書くのが面倒なので、式変形はプリントでということでしょうか。 いずれにしろ、式変形をプリントにするには準備に時間がかかるので、 それとの兼ね合いですね。


5. プリント(資料) (回答者数 15)

1: もっと多い方が良い。 4
2: もっと少ない方が良い。 0
3: 板書をもっとプリントにして欲しい。 6
4: 今回で適当。 6

半数近い人が「3:板書をもっとプリントにして欲しい。」を選んでいます。 やはり板書は多すぎましたか。 「4.計算の詳細」とあわせて考えてもプリントをもっと活用すべきでした。


文献案内をもう少し多くしていただくとうれしいです。
そうですか。 文献案内ですか。 私も他の先生の集中講義を受けたとき、 板書を写したノートより参考文献の方が結局良く見たので、 皆さんもきっとそうだと思い、参考文献をプリントにしました。 でも、もっと詳しい方が良かったのですね。 今後の参考にさせて頂きます。

6. 今回の資料で良かったもの (回答者数 15)

1: 時間割。 3
2: 目次。 5
3: 各章ねらい、ポイント。 9
4: 参考文献。 5
5: 計算。 4
6: 特にない。 2

「3: 各章ねらい、ポイント。」が圧倒的でした。 これは、準備するときにいつもノートにつくるのですが、 それをそのままプリントにしたものです。 これがないとどこにつれて行かれるか分からないですものね。 次が「2: 目次。」と「4: 参考文献。」でした。 この3つはとりあえず必修なようです。


7. 今回は無いが資料に載せて欲しいもの(回答者数 15)

1: 他の計算の詳細。 2: 図表。 3: 説明。 4: 特にない。
5 7 2 3

「2: 図表。」が多いです。 今回はほとんど図表を入れなかったのですが、 入れた方が良かったのですね。 特に図はプリントにきちんと書こうとすると、時間がかかって大変です。 しかし、アンケートに答えてくれた人の約半数がそう思うということは、 重要だということです。


8. 各章について(回答者数 14)

1:とても難しい 2:難しい 3:適当 4:簡単 5:簡単すぎた 6:興味が持てた 欠席
1.講義の目的と非平衡物理学の概観 1 0 7 1 0 3 1
2-1. 溶媒和ダイナミックス 0 2 7 1 0 2 1
2-2. 位相空間とリュービル方程式 1 1 8 1 0 1 1
2-3. 久保公式の導出 1 2 8 1 1 1 1
2-4. まとめ 1 1 8 1 0 2 0
3-1. 運動論的スケールの基礎方程式 1 2 9 0 0 1 0
3-2. 射影演算子 1 2 8 0 0 2 0
3-3. 非線型ランジュバン方程式の理論 2 7 3 0 0 1 0
3-4. 川崎-Guntonの方法 2 5 4 0 0 1 0

最後の2つ「3-3. 非線型ランジュバン方程式の理論」と 「 3-4. 川崎-Guntonの方法」が特に難しかったようです。 「1:とても難しい」と「2:難しい」が他の比べて多いです。 後半はやはり内容が難しい割に時間がかかり、 この講義でこの2つを扱ったのは失敗でした。


途中からの参加だったが、すんなり入り込めた。
肯定的な評価で有り難う御座います。 この方の回答を見てみると、「2-3. 久保公式の導出」からだったので、 ちょうど良かったのかもしれません。 この辺から式の変形が激しくなったので、 これを逃すと、苦しかったでしょう。 後半は、前半とかなり話が変ったので、 後半だけでも聞けたかもしれません。

9. 説明(回答者数 13)

1: わかりにくい。 2
2: 少しわかりにくい。 0
3: 普通。 1
4: わかりやすい。 6
5: とてもわかりやすい。 0
6: 具体例が少ない。 2
7: 式は追えるが概念的なことが分からない。 1
8: 全体の流れが分かりにくい。 1
9: 式の導出を丁寧にして欲しい。 1
10: 結果に対する考察が足りない。 1
11: 声が小さい。 0

「4: わかりやすい。」が多かったのですが、過半数は超えませんでした。 「1: わかりにくい。」が2人もいて、ちょっとショックです。 でも、おそらく説明の仕方というよりも、 内容が良くなかったのだと思います。

6以下は、大体同じぐらいの数で、票が割れましたが、 「6: 具体例が少ない。」が2人で少し他より多いです。 「具体例が少ない」のは、何時ものことなのですが、 今回は特に後半イメージしにくかったと思います。 「3.内容」にもありましたが、話題を1つに絞って応用例をやる方が 良かったと後悔しています。


式で使うものをちゃんと定義して欲しい
自分が頭の中で思っていても伝わらない
どうも申し分けありませんでした。 自分では定義しない記号は使わないつもりでしたが、やってしまいましたね。 この方の言うとおり、自分の頭の中だけつもりになっていても、 実際そうなっていなければ意味がありません。 「今後気を付けます」と言ってももう集中講義は終わったので、 後の祭りですね。 そういう事が後半を難しくした理由の1つでしょうか。

10. 講義の方法 (回答者数 13)

1: 板書が多い。 2
2: 少ない。 0
3: 適当。 8
4: 板書の字が大きすぎる。 0
5: 字が小さすぎる。 2
6: OHPを使って欲しい。 1
7: PCを使って欲しい。 1

とりあえず「3:適当。」が過半数だったのでよかったです。 「1:板書が多い。」と「5:字が小さすぎる。」が2人ずついました。 板書の量については、「 5.プリント(資料)」の結果でもわかるように、 もう少しプリントにすれば良かったですね。 と言うか、そもそも式変形中心の内容にしなければ良かったです。 「5:字が小さすぎる。」は、もっと準備をきちんとすべきでした。 講義が始まる時間ぎりぎりに名古屋に着きましたが、 前日から来て黒板でどれくらいの字の大きさが良いかを調べるべきでした。

「6:OHPを使って欲しい。」と「7: PCを使って欲しい。」が1人ずつでした。 実際OHPは使いましたが、PCは使いませんでした。 PCは、ノートパソコンを持っていないので、機材の問題がありますが、 javeを勉強したので、 インタネットでデモをやると面白かったかもしれません。


§3-4が消化不良になりました。 (時間がなかったので、仕方がありませんが)
時間配分も含めて3-4は失敗でしたね。 すでに何度か反省しましたが、内容を長岡先生と良く相談して、 1つの話題に絞り、応用まで説明するようにすれば良かったです。 どうも済みませんでした。
S(^がついたもの)とρの区別がめちゃめちゃしにくい S(^がついたもの)とつなげて小さいと判別不能
どうも済みませんでした。 字の小ささは特に記号が問題なのですね。 時々指摘されるのですが、完全に直すには至りませんでした。 やはり前日から来て黒板でどれくらいの大きさの記号が適当か、 試さないとだめですね。

11. 総合的に (回答者数 9)

1:非常に不満 2:不満 3:まあまあ 4:満足 5:非常に満足
0 2(15%) 3(23%) 4(31%) 4(31%)

「4:満足」と「5:非常に満足」をあわせてかろうじて過半数です。 「2:不満」が2人もいてショックです。 でも、やはり内容が悪かったですね。 計算中心だとそういうのが好きな人は良いかもしれませんが、 興味がないとつらいと思います。 実際皆さんの研究には、おそらく役立たないし、 せっかくだったら、もっと必要なことを勉強したかったでしょう。 今回は、初めての集中講義で、張りきり過ぎて、内容を失敗しました。 本当に済みませんでした。


感想、意見など

解析・量子力学は学部で少し学んだが、 浅学であるわりには、抵抗なく受講できた。 今回のノートを何度か見返していき、 研究の合間などで復習していったときに、 どこかで自分なりに理解できると良いと考えている。
こういう感想が最も嬉しいです。 有り難う御座いました。 結局自分で考えないことにはすべての勉強や研究は意味がないと思います。 特に考えることは、 実験や計算機シミュレーション等の他の研究方法と違って、 手軽に出来るので、退屈したときにでも試してみて下さい。 「あの時、吉森はあんな事を言っていたけど、どういう意味だろう?」 それで、少しでも「液体のダイナミックス」や「非平衡物理学」を 考える時間が増えれば、私はとても嬉しいです。
具体例で、久保公式の成り立っている系だけでなく、 成り立っていない系についても見てみれば、 もっと仮定の大切さが分かったかもしれません。 (今回の講義でもある程度分かりましたが)
貴重なご意見有り難う御座います。 成り立たない系の話はそれはそれで深く、面白いので、 後半その話にしても良かったのですが、 今回のような時間配分では難しいです。 つまり、 諸悪の根元は線形応答と後半の射影演算子の話の2つをしたことにあります。 どうしてそんな事になったかというと、 最初頼まれた時、初めての集中講義だし、 張り切って射影演算子の難しい話をしようと思っていたのですが、 長岡先生に非平衡物理はまったく知らないと知らされて、 ちょっとそれは無理だと気が付きました。 それで長岡先生と相談して、線形応答の話をすることにしたのですが、 やはり、射影演算子も捨てきれずに、 今回のような中途半端なことになりました。
階層性をつなぐ部分は興味深かった。 もう少し具体的な現象を取り上げてほしかった。

階層性をつなぐ話が面白かったですか。 射影演算子の方法は、 もともと微視的な階層と運動論的な階層を繋ぐためにつくられたのですが、 もっと一般的に階層を繋ぐことができるという側面があるわけです。 そういう側面を理解すると、いろいろなところで使えるので、 こういう講義をするときには重要です。 それが分からないと、 「なんだか難しいこと言っているけど、私には関係ないや。」 ということになるんですね。 実際、大気の運動とか、カオスの研究とか、 別の階層に応用している人はたくさんいて、 実は創始者の1人である森先生自身がそういう研究をしています。 だから、皆さんの研究にも使えるかも知れませんよね。

具体的な現象については、もう何度も言っていますが、 私の完全な失敗でした。 すみません。 話題を絞って、導出から応用までできるように時間配分をすべきでした。


ていねいで分かりやすかったと思います。 数式の意味も詳しく説明して頂けたらより良かったと思います。

ほめていただいてありがとうございます。 「数式の意味」については、やはり時間配分の失敗でした。 式の計算は、ある程度大事だと思いますが、 その意味が分からないと結局何やっているか分かりません。 ですから、式の計算、式の意味、式の応用、 その3つがバランス良く説明されていないとだめなんですよね。 その意味で今回の講義はあまり良くなかったと反省します。 すみませんでした。


楽しかったです。 どうでも良い話ですが、 「式」と「衡」が最後までまちがっておりました。

「楽しかった」というのも最高のほめ言葉です。 ありがとうございます。 字の間違えは申し訳ありません。 ただ、その場で指摘してもらえると、場が盛り上がったと思います。 もしかしたら指摘してくれたかも知れませんが。 それから、この方はアンケートの最後に書いてある 「有り難うございました。」にひらがなとコメントしています。 ありがとうはひらがなが正しいのでしょうか。


説明が丁寧でわかりやすかった。 たいへん勉強になりました。

この方もほめていただいて、ありがとうございます。 今までも書きましたように、 今回の講義はとてもうまくできたとはいえないので、 ほめられると皆さんの暖かさが身にしみます。


この辺りの内容の講義はあまり無いので勉強になりました。 また この辺りの講義があれば聞きたいです。

私は名古屋大学出身ですが、私が学生の頃は、 皆さんの所属されている情報科学研究科はありませんでした。 ですから、どういういう勉強をされているのかよくわかりませんが、 「階層の間をつなぐ」話なんて、普通は役に立たないし、 あまり聞く機会はないと思います。 でも、授業中にも強調しましたが、 本当に重要なのは、「線形応答」でも「射影演算子」でもなくて、 考えることです。 もう少しそれが分かるようしたかったのですが、うまくいきませんでした。 実験やシミュレーションの勉強も大事だと思いますが、 時々こういう物理の理論を勉強して、 頭を使ってみて下さい。




遠くからもこの集中講義を聴きに来てくれた人もいたようで、 有り難うございました。 しかしながら、集計結果に対するコメントにも書きましたが、 名古屋大学の学生さんにはかなりきつかったと思います。 集中講義を特別だと思わず、 九大の大学院でやっているような感じで講義する方が良かったです。 話題ももっと練って、できるだけ式変形中心にならずに、 その意味するところとか、応用をもっと説明すべきでした。 特に後半は、「液体のダイナミックス」はあまりでてきませんでした。 本当に拙い講義で申し訳ありません。 最後にこの集中講義を聴いてくれた人全員に感謝します。 有り難うございました。


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