質問と回答 (採点対象)

第3回 (4月25日)

この授業は質問を採点の対象にしています。 詳しくは、 ここを 見て下さい。

2回めは激減して2つになりました。 採点が厳しかったからでしょうか。

ホームページで公開不可、とは書いていなかったので、掲載しました。 (掲載に関して間違っていたら至急連絡して下さい。) 下線の上は私の回答です。 これの他に、提出したのに、載っていない、 あるいは、メールで回答が来ていない人は、連絡して下さい。 採点されていない可能性があります。


質問 1. (採点結果: 1点)

1. 多原子分子の自由度について、 運動は独立というのはどういう独立ですか? 運動は独立であることはエネルギー固有値が分けられる原因ですか?

「独立」という言葉は、本来、確率で使う言葉なので、 確率の言い方でいうと、回転とスピンが独立というのは、 分子がある回転の状態をとると言う事象と、 スピンがある状態をとる事象は相関が無いということです。 もし、ハミルトニアンがそれぞれの和でかける場合、 カノニカル分布であれば、それらの運動は独立になります。 しかも、その場合、量子力学的には、 エネルギー固有値が分けれる事も示せます。 つまり、独立が原因になっているというよりも、むしろ、 分けれる事が独立の原因になっていると考える方がよいでしょう。


2. 8.5式については、回転運動の分配関数といったが、×σi(縮退度)のとこ るによく理解できません。そして、エネルギー準位の8.4式は先生の講義の時に説 明がなかったが、今説明していいですか?特に慣性モーメントについてよくわかり ません。

まず、シグマについてですが、これは量子数の数え方により、 付けたり付けなかったりします。 エネルギー固有値に縮退が無ければ、まったく同じですが、 縮退がある時は、固有状態に番号をつけるか、固有値に番号を付けるかで変わります。 固有状態に番号を付けるのが教科書の(4.7)式で、 固有値に番号を付けるのが授業でやった場合でその時、シグマが必要になります。

(8.4)式は、水素原子のエネルギー固有値を知っていれば、簡単です。 4月18日に配った「授業ノート 1」の9式ですが、 今の場合は、 水素原子と違ってハミルトニアンが教科書P131演習問題[1]で与えられています。 これを、 水素原子の電子のハミルトニアンと比べると、mr2を慣性モーメント I に置き換えれば良いことが分ります。


3. hi^spin=0を仮定したら→εi^spin=0→n=1 しかない。Spinの状態によって エネルギーがかわらない状態である。この状態は一番基本的な状態ですか、あるい は、一番エネルギー低い状態ですか?

「この状態」がどの状態を指しているのかよく分かりませんが、 固有状態は 2S+1 個あり、そのどれもが同じエネルギー固有値 0 を持っています。 したがって、エネルギーは、どれも同じで、低いも高いもありません。


4. 低温展開のところ T→小 J→小のみが寄与 exp〔−J(J+1)Θ/T〕Tが十分 小さければ、即ち分母が十分小さいと Jの変化はもしできるでしょうか? 小というのはどんな程度ですか?場合によって違いますか?

温度が充分小さいと、Jの大きい項は、小さい項に比べて、 値が小さくなります。 したがって、教科書P124の(8.5)式の級数は、 Jの小さい項だけを残せば良いのです。 どれくらい小さければ良いかというのは、前にも質問がありましたが、 その時に必要な精度によります。 つまり、場合によって違います。

4つも質問してもらいましたが、理解度がわからないので、1点にしました。

それから、この方は、いつの授業の質問かが書いてありませんでした。 採点する質問に付いて でも書きましたが、

質問する授業の月日を必ず書いて下さい。

この日にちが無いと採点されないことがあります。

質問 2. (採点結果: 3点)

質問1
 多原子分子の自由度の所の話なのですが、 1つの分子にM個の原子があったとすると自由度は全部で 3M個ということでしたが、 これは単純に3次元だから3倍ということでいいんですか? また例えばMが3である時を想像したんですけど、 並進の自由度が3で回転の自由度が2(直線)というのは納得できた んですけど、 残りは振動の自由度のはずだから振動の自由度は4だっていうのが イメージできません。 どういう風に考えたら4になるのですか?

単純に 3次元で 3倍です。 ただし、スピンの自由度を考えると、さらに 3M 増えます。

振動に付いては、授業の後、聞きに来られた方もおられて、 少し分かり難かったかもしれません。 質問の例に沿って説明すると、3原子が直線状に並んでいる場合、 それぞれの間隔の長さが変る振動が、2個あります。 ここまではわりとするすぐ分かるので、振動は 2個しかないじゃないか、 あと 2個はどこに行ったんだと思われる方が多いかもしれません。 実は、この間隔の長さが変る振動の他に、 3原子分子が折れ曲がる振動があるのです。 つまり、真中の原子を中心にして、 後の 2原子が間隔を変えずに前後に揺れる運動です。 これは、偏角振動と呼ばれています。 この振動は、3原子分子が直線に並んだ時の直線に垂直な面内の 2つの方向があるので、自由度は 2個と数えます。


質問2
 分配関数の話ですが、ただ単純に Z と書いてあった時に、粒子1個(分子1個)あたりの分配関数なの かそれともちゃんとN個あたりの分配関数なのかが分かりませんでした。授業であつかったやつは特にn乗 などがついていなかったので勝手に1つあたりと解釈したのですが、それでよいですか?またそうだとす ると比熱の計算などをするときに1個の粒子の分配関数さえ計算すればN個の分配関数を求めなくてもだ せるということですか?

申し分けありません。 最初は、Z1と書いていましたが、 ただの Z もありましたね。 分子に限らず一般的な公式を書く場合は、Z にしてしまったので、 わかりずらかったかもしれません。 Zや Z、Zは、 全部 1分子あたりです。 また、比熱(熱容量)は、1つの分子の計算しておけば、 それに粒子の個数 N をかければ全体の熱容量がでます。


質問3
 教科書の123Pの下の方なんですけど、「回転運動のエネルギー準位は〜で、その縮退度は2J+1個 であることが知られている」と書いてあったのでjは単純に代入してでましたが、回転運動の縮退度はいつ も2J+1と決まっているのですか?それともこの時に関してだけですか?またその都度違うとしたら問題 を解くときにはきちんとあたえられるということですか? また振動の分配関数などを計算するときは縮退 などを考えなくていいのですか?つまりZ=〜の式にσがつくのは回転運動の時で振動やその他のときに は考えなくていいということですか?ちなみに最後の質問は宿題の1番を解く際の分配関数を求めるとき に感じた疑問です。

これは、量子力学の問題ですが、原理的には、縮退度は、 ハミルトニアンで決まります。 つまり、与えられたハミルトニアンで固有値問題を解いて、 同じエネルギー固有値を持っている固有状態の数を数えるわけです。 2J+1 というのは、 教科書P131の演習問題[1]にのっているハミルトニアンの時です。 「回転」と言っても別のハミルトニアンの時は、別の縮退度になります。 この授業は、統計力学の授業なので、 ハミルトニアンから縮退度を計算するような問題は考えませんが、 「回転」の縮退が 2J+1 になるぐらいは覚えておいた方が良いかもしれません。

振動に付いては、量子力学を勉強されると良いと思うのですが、 1次元には縮退がありません。 しかし、2次元や 3次元になると縮退します。 例えば、2次元の場合、量子数は 2種類ありますが、 その 2つの和が等しい固有状態は同じエネルギーを与えます。

今回のポイントは、

  • 多原子分子の自由度の数え方を理解する。(3点)
  • (8.5)式を理解し、 一般に離散的なエネルギー準位を持つ量子系の分配関数が計算できる。(3点)
  • 分配関数から比熱が計算でき、 特に低温での表式を導けるようにする。(3点)
ですが、この方の場合、 多原子分子の自由度の数え方を半分ぐらい理解できていると思えましたので、 2+1点で 3点にしました。


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