質問と回答 (採点対象)

第4回 (5月9日)

この授業は質問を採点の対象にしています。 詳しくは、 ここを 見て下さい。

回答が遅れて申し分けありません。 今回は4つありました。

ホームページで公開不可、とは書いていなかったので、掲載しました。 (掲載に関して間違っていたら至急連絡して下さい。) 下線の上は私の回答です。 これの他に、提出したのに、載っていない、 あるいは、メールで回答が来ていない人は、連絡して下さい。 採点されていない可能性があります。


質問 1. (採点結果: 3点)

 ボーズ粒子はスピンと回転の対称と対称、反対称と反対称でフェルミ粒子は対称と 反対称、反対称と対称の積の足し合わせで分配関数がかけるのはわかりましたが、な ぜ回転の時に対称=reで反対称=roになるのですか?

 スピンが対称なのがオルソ分子で、反対称なのがパラ分子ですが、その2つを実験 で区別できるというのはどのようにして調べるのですか?あとその2つの存在比を考 えましたが、0−1までの比率でどっちかが多いということがわかったとき、になに かわかることがあるのですか?

角運動量の固有関数は、回転の量子数 J で特徴づけることができますが、 その固有関数は、粒子の入れ替えに対して、 符号を変える場合と変えない場合のどちらかしかないという、 特別な性質があります。 どちらの場合になるかは、J が偶数か奇数かで変ります。 エネルギー準位も、J で区別されるので、 対称状態だけを集めるには、J が偶数の値を取る時だけを足し合せれば良く、 反対称状態だけを集めるには、奇数だけ足し合せれば良いのです。

オルソ分子とパラ分子の実験的区別ですが、申し分けありません。 良く知りません。 ウィキペディア(Wikipedia) を見ても、比熱や熱伝導率などに差が出るとしかありません。 授業でやったように、分配関数が違うのですから、 特に低温で違いが出るのですが、混ざっている場合、 その比を実験的に検出する方法はわかりません。 別のページには、ESRを使うとも書いてありました。 おそらく磁気的な性質が違うので、それを使うのが普通でしょう。

比率を知って何が分かるかですが、 統計力学の興味で言えば、スピン種の転換が早く起る場合(アニール)と、 スピン種の転換が起こらない場合(クエンチ)で、比熱に違いが出るわけです。 詳しくは教科書で見てもらうことにして、 比率を知るとアニールかクエンチか分かります。 それは、基礎的な興味でしたが、応用上にも分かることがあると思います。

今回のポイントは、

  • 等核2原子分子の分配関数をフェルミ粒子、 ボース粒子の性質を考えて計算(5点)。
  • 分配関数からスピンの状態の存在比が計算できる(4点)。
で、最初の質問が1番目のポイントの1/3ぐらい分かっていると、 思われたので2+1点にしました。

それから、この方も、いつの授業の質問かが書いてありませんでした。

質問する授業の月日を必ず書いて下さい。

日にちが無いと採点しないかもしれません。

質問 2. (採点結果: 1点)

1.なぜスピンは符号によって 対称か反対称かを決めないのでしょうか.

「符号によって」の意味がよく分かりませんが、教科書のP126〜P127の[注意]を見ると、 v1とv2を入れ替えた時に、 符号を変えないものが対称、変えるものが反対称になっています。


2.どうして半整数のスピンのときフェルミ粒子、整数のスピンのとき、ボーズ粒 子になりますか?H2は2つのFermi粒子D2は2つのBose粒子からなるのは実験で決ま ることですか?原子核にある中性子のせいですか?そして、先生は計算したH2の Spinは単純にH2分子の2つ陽子と2つ電子を分かれて計算したものですか?陽子と 電子との影響も考えて計算したものですか?

スピンの値とフェルミ粒子とボース粒子の関係は、私の手には負えません。 量子のIIIでやるらしいので、きちんと授業を受けて私にも教えて下さい。 H2とD2は、もちろん実験でもフェルミ粒子かボース粒子か測定できますが、 理論的にも水素原子のスピンが 1/2、重水素が 1 と分っているので、 そこから分ります。 重水素が 1 なのは、中性子があるからです。 スピンは、核のスピンで電子のスピンは関係ありません。 電子のスピンについては、授業ではいっさい触れませんでしたが、別の考慮が必要です。


3.H2は、SA=1/2 より、nH2(T)=3ro/re で、高温と低温がそれぞれ極限を取る ときに低温極限では、H2 は全てパラ分子となることが物理的にどのような状態です か、イメージできません。

授業でやったのは、スピン種の転換が速い場合で、 温度を低くすると、 全ての分子はよりエネルギーの低いスピン種に転換します。 回転のエネルギー準位が最も低い J は、パラが 0 に対して、 オルソは 1 なので、パラ分子の方がエネルギー準位は低いのです。 したがって、全てバラ分子になります。


4.回転の分配関数はなぜ対称ならre(J が偶数)、反対称ならro(j が奇数)にな るか。

この質問は、質問 1 と同じなので、そちらを見て下さい。

この方は、どれくらい理解しているかわからなかったので、1点にしました。


質問 3. (採点結果: 1点)

等核2原子分子の分配関数については、フェルミ、ボース粒子の性質を考える必要があり、具体的には角運動の波動関数とスピンの波動関数の積が空間反転に対してフェルミでは反対称、ボースでは対称にならなければならないというところは理解できました。また、角運動の波動関垂ェ、jが偶数なら対称、奇数なら反対称ということも分かったのですが、スピン波動関数について疑問が残りました。縮退度について、2つの粒子のスピンの合成波動関数を指定するのに、それぞれが別の準位に入っている場合、合成波動関数が2つの状態(例えば粒子1がv(-Sa)、落q2がv(−Sa+1)に入っている状態と、逆に粒子1がv(−Sa+1))、粒子2がv(-Saに入っている状態の2つ)の和や差で指定されているのがなぜか分かりません。2つの粒子のスピンの合成波動関数はひとつの状態についてひとつ指定できるものなのではないでしょうか

これは授業後に質問に来られた方もおられたのですが、 結局、プリント 授業ノート 1(pdf) の(21)式が表す様な

対称か反対称の性質を満たさない固有状態は存在しない

がポイントです。 これ自身は量子力学のルールとしてとりあえず、理解して下さい。 量子力学IIIでもっと深い理由が分かるかもしれません。 とにかく、このルールを認めてもらえれば、 例えば、2つの粒子が違う1粒子準位にいる時、 単に1粒子の波動関数の積の状態というのは許されません。 和や差で表される状態しか有り得ないというわけです。

「角運動の波動関数とスピンの波動関数の積が空間反転に対してフェルミでは反対称、 ボースでは対称にならなければならない」 という個所から1番目のポイントの1/6ぐらい理解されていると判断して、 1+1点にしました。


質問 4. (採点結果: 3点)

○質問をする前に今回の授業で分かったことについて書きます。
 前回異核2原子分子の分配関数をやったのに対して今回は等核2原子分子の分配関数を解きました。等 核の時は二つの粒子を入れ替えたときに関して、全波動関数はボース粒子だと符号を変えずフェルミ粒子 だと符号を変えるという性質がありました。また、全波動関数は角運動量の固有関数×スピンの固有関数 で与えられ、ボース粒子の時は角運動量とスピンがそれぞれ対称×対称か反対称×反対称で、フェルミ粒子 の時は対称×反対称か反対称×対称の時があるということが分かりました。それぞれ二つの状態を足し合わ せることで分配関数が導かれます。
 次にスピンの縮退度を求めました。対称の時が(Sa+1)×(2Sa+1)個で反対称の時がSa×(2Sa+1)個でし た。またスピンが対称の状態をオルソ分子、反対称の状態をパラ分子としました。回転の分配関数を偶数 の時と奇数の時で分け、それぞれを文字で置くと先ほど述べた方法により分配関数が求められ、それより オルソ分子の確率とパラ分子の確率をだし、それの分数を求めることでオルソ分子とパラ分子の個数の比 が求めることができました。

質問1
 宿題を解いているときに感じたのですが、水素分子と言われたらそれがSa=1/2でフェルミ粒子からな ることや重水素がSa=1のボース粒子からなることは覚えておかないといけないんでしょうか?

水素原子(陽子)や重水素原子のスピンの値は、 統計力学IIの範囲ではありませんので、 この授業では覚えなくても良いです。 ただ、物理学科の学生として、 おそらく知っておかなければ、ならないことの1つでしょう。 ですから、量子力学IIかIIIでは、覚える必要があるかもしれません。


質問2
 オルソ分子とパラ分子の比を求めよと言われたときに、必ずn=オルソ/パラとおくように決まってい るのですか?

以上で質問を終わります。

もちろん、決まっていません。

質問 1.の方と同じ理由で3点です。



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