質問と回答 (採点対象)

第1回 (4月12日)

この授業は質問を採点の対象にしています。 詳しくは、 ここを 見て下さい。

初回から3つも質問が来て嬉しいです。 最初なので、採点が大分甘くなりましたが、 今後もどしどし質問して下さい。

ホームページで公開不可、とは書いてなかったので、掲載しました。 (掲載に関して間違っていたら至急連絡して下さい。) 下線の上に私の回答があります。

(追加) 申し分けありませんが、宿題の中に1つ紛れていました。 初回は全部で4つでした。 1つだけ回答が遅れて申し分けありません。


質問. (採点結果: 10点)

質量の無い素粒子である光子は 理想気体であるというお話がありましたが、 「質量が無い」ということは体積がなく 実体がない物質という風に自分には思えてしまいます。 もし体積がないのだとすれば、 そういう物質(?)に対して気体・液体・固体という状態を 考えること自体おかしな感じが自分にはするのですが、 このことはどう考えればよいのでしょうか。

この質問はとても大切な質問です。 特に前半の「質量がない粒子は考えられるか」という質問については、 統計力学の問題ではないので、ここでは説明しませんが、 素粒子の授業でも聞いてみて担当の先生を困らせて下さい。 一応の答えはあると思うのですが、多分それでは満足されないでしょう。 実は私も最初聞いた時釈然としなかったのですが、 そのうちその疑問も忘れてしまい、 まあ、質量のない粒子があっても良いか、と思うようになりました。 たぶん、大事なことは、この疑問どれくらい持ち続けることが出来るかで、 1生持ちつづけている人のことを研究者と呼ぶのだと思います。 自分でいろいろ勉強して、 自分自身、納得できる答えを見付けて下さい。 もし、見付けたら、是非私にも教えて下さい。

後半の「気体・液体・固体という状態を考えること」についてですが、 「理想気体」は、相互作用しないので、液体にも固体にもなれません。 そういう意味で「気体」という言い方は変かもしれませんね。 それでも、相互作用する粒子は、密度が充分小さい極限で、 「理想気体」と見なせるので、その場合には普通気体ですから、 名前の由来はそこからきています。

この日の授業はしょーもない事ばかり言っていたので、 とりあえず理想気体の部分で言ったことが分かっていそうならば、 10点満点にしています。 しかしながら、今後はもう少し厳しくなるので、注意して下さい。 例えば、19日の授業では、ポイントは核スピンの扱い、 回転の古典的な計算と量子力学的な計算の3つあるので、 この3つについて質問しなければ、10点満点になりません。 つまり、最低3つ質問が必要になります。


質問. (採点結果: 10点)

@ カノニカル分布・グランドカノニカル分布を さまざまな現象に応用と板書されたが、 具体的にはどのようなものか。

実際にいろいろな現象に応用できますが、 この授業では、多原子気体特に、2原子分子の理想気体と、 フェルミ粒子とボーズ粒子の理想気体、 そして最後に相転移現象にも応用します。


A 理想気体(互いに相互作用しない気体)の例で ''光子''が挙げられていたが、 光は干渉などの''相互作用''をするのではないのか。 また、光を理想気体として扱うとどのようなことが分かるのか。

これはなかなか鋭い質問で、「干渉」は相互作用か、ということですね。 相互作用という言い方もきちんと説明しなかったのが悪いのですが、 ここでは違う粒子の間のエネルギーのやり取りという意味です。 光を粒子と考えた時、違う粒子とは何か?という問題になりますが、 それは統計力学というより量子力学ですね。 逆に電子線で考える方がわかりやすかもしれません。 電子線でも量子力学を考えると干渉が起こりますが、驚くことに 違う粒子の間では干渉しません。 たとえば、2つのスリットを用意して、 そこに電子を通して干渉を起こさせるとすると、 2つのスリットを通って干渉するのは同じ粒子です。 まったくびっくりです。 同じ粒子が2つをスリットを同時に通って干渉しているわけです。 信じられないかもしれませんが、後は量子力学の先生に聞いて下さい。 ということは、光の干渉も、同じ粒子の間で起こるので、 ここで言っている相互作用と違うというわけです。

この人も前の人同様満点です。 最初の質問は、授業で言ったつもりですが、 後の質問は、理想気体は何かが分かっている感じだったので、 満点にしました。


質問. (採点結果: 10点)

ハミルトニアン(微視的) --> 熱力学量(巨視的)
この手順において、微視的な量を巨視的な量にすると、 精度が落ちないか? また、微視的な熱力学量は存在しないのか?

これはびっくりすることですが、原理的に、精度は落ちません。 微視的な情報から巨視的な量を厳密に計算できる方法が統計力学です。 そう言う意味で、「すごい」ということが言いたかったのです。 ただし、統計力学が与えるのは式だけで、 その式が実際に計算できるかどうかは別の問題です。 実は、厳密に計算できるのは、理想気体などのわずかな例だけで、 ほとんどの場合は簡単には計算できません。 その場合には統計力学の式を近似的に解くことになり、 近似のために精度は落ちます。 つまり、統計力学の式にしたがっていれば、精度は落ちませんが、 統計力学の式を厳密に計算するのは多くの場合、難しいということです。

「微視的な熱力学量」のことですが、これは、ちょっと言葉の問題で、 自信がありませんが、 一般的には巨視的な量のことを熱力学量と呼ぶと思います。

この質問は、理想気体のことに関してではなかったのですが、 ポイントを理想気体に限るのも変ですので、満点にしました。 しかし、これからは少し厳しくなるので、注意してください。 もう遅いと思いますが、19日の授業のポイントは、核スピンの分配関数、 回転の古典的な計算と量子力学的な計算の3つです。 26日は、

同核2原子分子の分配関数の計算

について、それが理解しているような質問であれば、10点満点取れます。

質問(追加). (採点結果: 10点)

ボーズ粒子とフェルミ粒子の区別がよくわからない。 相互作用がなく、状態数がいくつもとれるのがボーズ粒子で 相互作用があって状態数がn=0,1の2つしかとれないのが フェルミ粒子ということでいいのですか? 教科書には波動関数が対称、反対称になると書かれていますが それは何を意味するのですか?

この部分は次回、1回の授業を使って私なりに説明しようと思うのですが、 それでも教科書以上のことは説明できないので、 この方の質問には答えられないかもしれません。 特に対称、反対称は、 量子力学では粒子の区別をしないことと深い関係があるのですが、 そもそも、なぜ粒子の区別をしないのか、 を説明する時間があるかどうかわかりません。 それは、統計力学の普通の教科書には書いてなく、 おそらく量子力学IIIで説明される内容です。 ただし、歴史的になぜ導入する必要があったかは、 朝永振一郎著「量子力学II」みすず書房10章に詳しく説明してあります。 ここでは、波動と粒子の同等性が関係しているとだけ言っておきましょう。

対称、反対称だけ分かれば、とりあえず、 フェルミ粒子がなぜ1つの準位に1個しか入れないのか、わかります。 それは、次回説明します。 なお、フェルミ粒子とボーズ粒子の違いは、 相互作用のあるなしと関係ありません。 ただし、1粒子準位が意味があるのは相互作用がない時だけです。

これは、理想気体と関係ありませんでしたが、大盤振る舞いで満点です。 次回からは重要な点がわかっているかどうかで採点します。 今回のように相互作用のところが少し間違っているような場合は、 減点の対象です。


戻る

戻らない

吉森明のホームページへ