質問と回答 (採点対象)

第10回 (6月21日)

この授業は質問を採点の対象にしています。 詳しくは、 ここを 見て下さい。

ようやく回答が追いつきました。

ホームページで公開不可、とは書いてなかったので、掲載しました。 (掲載に関して間違っていたら至急連絡して下さい。) 下線の上に私の回答があります。


質問. (採点結果: 3点)

類題を2つの解法で解いた後、§10.4.1をやりましたが、
@光子の状態密度を求める時、波数空間で考えましたが、 光は偏りが2方向あるという部分がわかりません。 偏りは何を表しているのでしょうか

光を波と考えると、横波と結論できます。 横波とは、振幅の方向が進行方向に垂直な波のことですが、 3次元空間である方向に垂直な方向は 2つあります。 この 2という数が、状態密度を 2倍することと関係しています。 一般に光は、いろいろな振幅方向が、混ざっていますが、 その分布が一様でない時、「偏っている」 と言い、偏っている光を「偏光」と言います。

状態の数は、この振動の方向が独立な 2つのベクトルで表せるために、 波数を固定しても 2個あると数えるのです。 もちろん、振動の方向は360度どこでもとれるので、 それぞれを状態の数にあてはめると、無限個になりますが、 実際区別できる状態は、2つしかありません。 それは、スピンと同じ事情で、もし磁場など無く、 スピンに関しては等方的であれば、z 方向の2つの固有ベクトルだけでなく、 その線形結合も別の状態です。 しかし、その状態を区別するためには、磁場などをかけて、 固有値の縮退を解くわけですが、スペクトルは2つにしか分裂しません。 光についても同様で、偏光板によって区別できるのは、 2つの状態しかないのです。

これについては、私にもまだ良く分からないこともあるので、 ご自分でも少し考えてみて下さい。 そして、何か分かったら教えて下さい。


計算すると D(w)=W2/(π2C3) が求まり、 w〜w+dwの間にある単位体積当たりの状態数は  D(w)dw となりました。 そして電磁波のエネルギー密度を求めるのですが
A u(w)dw=ΣS<nS>hwS = <nS>hwS D(w)dw (hはエイチバー)
となると考えられますが、WsをWとしている点がわかりません。 P157(10.44) w〜w+dw に S番目の固有振動角振動数のどこが対応するのかが、 分かりません。

これは基本的にはエネルギー準位に対する足し合せから、 エネルギーについての積分に近似する時と同じです。 前の時は、量子数だったのが、 光の場合は、固有振動についている番号 s です。 前の時は、量子数に対する足し合せが、 今の場合は、固有振動に対する足し合せになっているのです。 体積が大きくて固有振動の間隔が狭くなると、 この足し合せは積分に近似できます。 そのとき、エネルギーについての足し合せではなく、 角振動数に対する足し合せになります。 したがって、@ と書いたすぐ後の式は、 積分記号があって、イコールが成り立ちます。
A ∫u(w)dw=ΣS<nS>hwS = ∫<nS>hwS D(w)dw (hはエイチバー)


さらに §10.4.2について BP159(10・53)式の被積分関数を X2と近似する理由がわかりません。

ここは、説明する時間がありませんでした。 教科書の(10・52)式を見てもらうと、高温では積分の上限が小さくなります。 したがって、被積分関数の x の値も積分の下限 0 に近くなります。 そこで、x の小さいところだけをとるのですが、 exp(x)-1 ~ x と近似すると、分母は x の 2乗になって、 さらに、分子は exp(x)~1 とすれば、x の 4乗になるので、結局
x 4 exp(x)/(exp(x)-1)2 ~ x2
と近似できます。 この計算は、単純にデバイ温度でテーラー展開しても導けます。

今回のポイントは、

  1. 圧力とエネルギーの関係(2点)
  2. 格子が化学ポテンシャル 0 のボース粒子である事(1点)
  3. 格子の状態密度の計算(2点)
  4. デバイモデル(2点)
の 4 つです。 この質問は、これらのポイントが分かったのか分からなかったので、 3点です。

質問. (採点結果: 3点)

類題の解答の中のテイラー展開で△Tの2次の項までとっているのに、 μの2次の項までないのは何故ですか

最終的には、温度 T をTc のまわりで展開して、2次までとる事が目的です。 この時、他の変数を止めて展開するので、

何を止めるかによって展開が変ります。

これが重要な点です。 ここでは、S = S(T,N,V) で、止める変数は N と V ですが、 例えば、S = S(T,μ,V)として、化学ポテンシャルを一定にして、 展開することも出来ます。 S(T,N,V) と S(T,μ,V)では、同じ温度の展開でも、 展開係数は変ります。

もし、S(T,μ,V)を出発点にして、Nを一定にして展開するなら、 μ = μ(N,V,T) なので、μによる展開も必要なのです。 つまり、
S(T,μ,V) = S(Tc,0,V) +a△T +b△T2 +dμ +e△Tμ +fμ2 +・・・
ですが、さらにこれに、μ の展開を代入する必要があります。 ただ、今の場合、μ は、△Tの2次の項から始まるのがわかっているので、
μ(N,V,T) = c△T2 +・・・
これを代入すると、
S(T,μ,V) = S(Tc,0,V) +a△T +b△T2 +d(c△T2) +e△T(c△T2) +f(c△T2) 2 +・・・
e と f の項は△Tの3乗以上のオーダーになるので、無視できるのです。

ポイントがわかっているかどうか、わからないので、3点にしました。


質問. (採点結果: 4点)

1)§10.1の例題の解答Aで熱力学の関係式(P10.表1.2)から
E = -(∂q/∂(1/T))V,z = (∂/∂(1/T)J/T)V,z
から、 E = -(∂βJ/∂β)V,z --- @
となっていました。これで
J = -PV だから βJ ∝ T3/2 ∝ β-3/2ということで、 比例定数をCとして
βJ = Cβ-3/2 (=> J = Cβ-5/2)
と表して@の式に代入すると
E = -(∂/∂β(Cβ-3/2)) = (3/2)Cβ-5/2 = (3/2)J = -(3/2)PV
となり、マイナスが残ってしまいます。@の式は1つ前の式から E = (∂/∂(1/T)J/T)V,z = (∂/∂(1/kBT)J/kBT)V,z => (∂βJ/∂β)V,z となると思います。
あとE = (∂/∂(1/T)J/T)V,zと出てきた段階で、 J = -PV だから、 βJ ∝ T3/2で比例定数を C' として βJ = C'T3/2 => J/T = C'kBT3/2 (=> J = C'kBT5/2)
E = -(∂/∂(1/T)(C'kBT3/2)V,z = -(∂/∂(1/T)(C'kB(1/T)-3/2)V,z = C'kB(-3/2)(1/T)-5/2 = (-3/2)C'kBT5/2 = -(3/2)J = (3/2)PV
と導出することができました。

上に書かれている通り
E = (∂βJ/∂β)V,z
が正しいです。 もし、板書が間違っていたらごめんなさい。


2)[問題]の解答で 「波数空間で考えられると光は偏りが2方向あるので・・・」 と書かれてありましたが、 光の偏りが2方向のイメージがどうも良く分かりません。教えてください。

上の方にあった質問の回答と同じです。

この人は、ポイントの1つ「圧力とエネルギーの関係」で、 少なくとも熱力学の部分は分かっておられるようなので、1+3 = 4 点です。


質問. (採点結果: 3点)

<I>板書で「粒子数を人間が制御できないので〜」とありましたが、 6/7の板書では「μではなくNを制御」とありました、 一体どちらが本当なのですか

分かりにくい説明で申し分けありませんでしたが、両方本当です。 つまり、

「普通の粒子」は、粒子数を人間は制御できます。

でも、たくさんあったら数えられないじゃないか、 と言う人がいるかも知れませんが、だいたい重量を測れば、 粒子数も分かります。 それに対して、

「光子」の粒子数は、人間が制御できません。

光には質量が無いので、重量から測ることが出来ないし、 何よりも、容器の中に閉じ込めても、勝手に生れたり、消えたりするので、 粒子数を一定に保つことが出来ないのです。

<II>板書で立方体に閉じこめられた光子の状態密度が D(w)=w2/(π2c3) となるのは分かったのですが、 実際計算ではεを使いますよね。なぜD(ε)を求めないのですか。

D(w) でも D(ε) でもまったく同じです。 好きな方を使ってもらえれば、良いです。 実際、D(w) でも計算できるし、D(ε) でも出来ます。 教科書も D(w) で計算していたし、宿題も D(w) を使ったと思います。 さらに、w とεは、ε= hw/2πなので、D(w) から D(ε) を計算できるし、その逆も出来ます。


<III>P159で 「D(w)=0 (それ以外=w<0, w>wD)」 とありますが、D(w)=0という状態が想像できません。 物理的直感としてわかるような説明をしてください。

波数空間で D(w) は、球殻の体積になります。 w = 0 は、球殻の半径が 0 になるので、D(w) も 0 です。 w が負の場合は波数空間のどこにも対応しないので、やはり 0 になります。 こんな説明で物理的直感として分かったでしょうか。 もし、分からない時は、部屋まで来て下さい。 コーヒーをご馳走しますから、一緒に考えて下さい。

ポイントがわかっているかどうか、わからないので、3点です。


質問. (採点結果: 3点)

T=Tc で So がなめらかであることを示すために S(T,M)のM=0,T=Tcでの展開を書かれたと思うのですが、どうして
S0 ~ S(Tc,0) +ΔT(∂S/∂T)T=Tc,μ=0 +(ΔT2/2)(∂2S/∂T2) T=Tc,μ=0 +・・・
からなめらかであるとわかるのでしょうか

他の物理量を動かすと化学ポテンシャルが 0 でない値から 0 になるのがBE転移なので、 化学ポテンシャル一定では決して転移は起こりません。 つまり、化学ポテンシャル一定で他の物理量を動かしても、 決して不連続にならないのです。 したがって、
S0 ~ S(Tc,0) +ΔT(∂S/∂T)T=Tc,μ=0 +(ΔT2/2)(∂2S/∂T2) T=Tc,μ=0 +・・・
は、化学ポテンシャルが 0 のエントロピーの値なので、 温度をいくら変えても不連続になりません。

ポイントがわかっているかどうか、わからないので、3点です。




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