質問と回答 (採点対象)

第11回 (6月28日)

この授業は質問を採点の対象にしています。 詳しくは、 ここを 見て下さい。

ホームページで公開不可、とは書いてなかったので、掲載しました。 (掲載に関して間違っていたら至急連絡して下さい。) 下線の上に私の回答があります。


質問. (採点結果: 3点)

平均場近似を使うことによって、σiをΣの外に追い出し
  H=(省略)
としたところから計算をスタートさせ、 Aを最小とするのが現実するMであるということで出てきた
M=tanh(βJzM)
の式の解の個数が1コから3コとなる境目の温度として転移温度
Tc=ZJ/(KB)
を求めたわけですが、 解Mの個数が変わるということと相転移が起こるということの関係が 良く分からなかったのですが。

そこは時間が無くて、ゆっくり説明できなくて申し分けありませんでした。 相転移とは今の場合、ある温度で M が 0 から 0 でない値に変ることをいいます(注1)。 Aを最小にするのが実現する M なので、 極値を表す方程式 M=tanh(βJzM) を満たす M が実現する M の候補となります。 それが、M = 0 しかない場合、実現する M は、0 です。 しかし、温度が下がって、解が3つ出てくると、元の A のグラフから、 M = 0 が極大、そして 0 でない所に 2 つ最小が現れることがわかります。 この場合は実現するのは、0 でない方の M なので、 相転移したということになります。 つまり、解の個数と、最小の値が関係しているために、 相転移は解の個数の変化と同時に起こるのです。

注1: 7月5日の授業でやったとおり、外部磁場を完全に 0 にすると、 M は何時まで経っても 0 です。 相転移は数学的には、外部磁場に対する不連続性で定義されます。

今回のポイントは、

  1. イジング模型と相転移(2点)
  2. 平均場近似の Aの計算(3点)
  3. 相転移が起こる温度(2点)
の 3 つです。 この質問は、これらのポイントが分かったのか分からなかったので、 3点です。

質問. (採点結果: 3点)

<1>板書で「式省略(教科書P163(11.1)式参照)」としていますが、(Textでも) 「式省略」は化学ポンテンシャルで必要なのはわかりますが、 「式省略」が具体的にどのようなものなのかイメージできません。 Jは強磁性的スピン間相互作用であるとありますが、 スピン同士にどのような相互作用があるのですか? またΣ<i,j>は最近接格子点対についての和とありますが、 次近接や次次近接等は考えなくても良いのですか?

まず、(11.1)式の中には化学ポテンシャルは、ありません。 μの頭に棒がついている記号は、化学ポテンシャルでなく、 スピンの磁気モーメントです。

J については、私は良く知りません。 すみません。 物性物理学で詳しくやると思います。 ここでは、その起源を問わないで、そういうハミルトニアンがあった時、 統計力学でどう扱うかという設定です。 ただし、J > 0 が大事で、スピンの向きがそろうと、 エネルギーが下がる様になっています。


<2>∂A/∂M=0 より M=tanh(βJzM) となり極小点の位置はこの解として得られる, という所まではわかるのですが、 この式では左右に M があるのに text P166にあるように 「(11.10)の右辺を M の関数」と言うところが気になります。 左辺にも M があるのに・・・ 図11-2で横軸はMをとっているのは読みととれますが、 縦軸は何をとっているのか書いてありません。

左辺に M があっても M の関数であることには変りません。 「関数」という言葉の意味が問題かもしれませんが、 「M の関数」といった時は、M の値が決まると、その値が決まるもの、 というわけです。 したがって、M = f(M) という方程式があった時、f(M) は、M の関数です。

図 11-2 の縦軸は、2つグラフを一緒に書いているので、2 種類あります。 1 つは、M で、もう 1 つは、tanh(βJzM)です。 したがって、このグラフが交わる点が M=tanh(βJzM) の解になるわけです。


<3><2>とも関係しますが、 「
zJ/(KBT) <1解は1コ
>1 3コ
=> TC=zJ/(KB) 」とありますが、 どのようにして Tc=zJ/ (KBT)が出てくるのかわかりません. ZJ/ (KBT) ≦ 1 のときzJ/ (KBT)=1 より T= zJ/(KB)としたのでしょうか?

相転移が起こる温度 Tc は、温度が Tc 以上では M = 0 で、 Tc 以下になると(わずかな外部磁場に対して) M が 0 でなくなる温度です。 別の方の質問にも関係しますが、 zJ/(KBT) = 1 を境に、解が1つから 3 つに変るので、 zJ/(KBT) = 1 を満たす温度が転移温度になります。

ポイントがわかっているかどうか、わからないので、3点にしました。


質問. (採点結果: 3点)

スターリングの公式は lnN! 〜 Nln N/(e) ではなく Nln N/(10) ではないですか?
[証明] N!=NlogN -N より
     lnN!= logN!/(log e) = NlogN-N/(log e)
=N logN/(log e)- N 1/(log e)
=NlogN-Nlog10/(log e)
=NlnN - Nln10
=N ln N/(10) [証明終了]

最初に書かれている式は、N!=NlogN -N でなくて N!=NlnN -N だと思います。 教科書P32参照のこと。

ポイントがわかっているかどうか、わからないので、3点です。


質問. (採点結果: 2点)

(1) ここでは(§11.2)イジングスピン (SZ =+1 又は -1)しか、考えていませんが、 S2=1 の場合、Sz=-1,0,1 この3つの値を取ります。 Sz = 0は考慮しなくてもよいのですか

この時間で説明したのは、スピンの絶対値が、1/2 の場合だけです。 それは、単に話を簡単にするためで、スピンの絶対値が 1 の場合でもまったく同じ様なことが成り立ちます。 実際、宿題に出しました。 したがって、決して考慮しなくて良いわけではありません。


(2) T>Tc=ZJ/(KB)において、 M は M > 0 又は M < 0 となりますが、 正になるか負になるかがどんな要素によってきまりますか。

これは鋭い質問ですが、7月5日の授業と関係があります。 つまり、外部磁場がまったく無ければ、M は 0 のままなのです。 M を 0 からずらすには、ほんのわずかな外場磁場が必要です。 その外部磁場の符号で、Mの符号が決まります。 外部磁場が正であれば、M も正だし、外部磁場が負ならば、M も負です。

ポイントがわかっているかどうか、わからないので、3点ですが、 遅れて提出されたので、6割の2点です。




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