質問と回答 (採点対象)

第8回 (6月7日)

この授業は質問を採点の対象にしています。 詳しくは、 ここを 見て下さい。

回答がおくれてすみません。

ホームページで公開不可、とは書いてなかったので、掲載しました。 (掲載に関して間違っていたら至急連絡して下さい。) 下線の上に私の回答があります。


質問. (採点結果: 4点)

<1>ε=0の状態は Kx=Ky=Kz=0 の状態を表し、確実に存在するが D(0)=0であり、ε=0の状態が物理量に反映しないので寄与を考慮に 入れなくてはならないことはわかりましたが、どのようにして (1/V)z/(1-z) を寄与と考え(思いついた)のですか?

最初に考えた人はどうやって思いついたのか分かりませんが、 問題が起こるのは、授業でも説明した通り、化学ポテンシャルを 0 に近づけた場合です。 フェルミ粒子の場合は、V が大きければ、 エネルギー準位についての足し算を積分に置き換えても問題ありません。 しかし、ボース粒子の場合は、問題大有りです。 化学ポテンシャルを 0 にすると、 厳密な方は発散するのに、積分で近似した方は発散しません。 つまり、

ボース粒子は、化学ポテンシャルが 0 の極限で積分の近似が悪くなる。

という訳です。 それでは積分は使えないかというと、そういうわけではなくて、

積分に余分な項を加える

とうまくいきます。 どんな項かというと、問題になるのは、 ε = 0 の基底状態なので、 厳密な式からその項だけ取り出して、積分に加えれば良いのです。 ということで、「思いつく」のですが、いかがでしょうか。

<3>  板書でボース統計(μ->0 で全て等確率)ボルシマン統計( μ->0 でnコはいる確率 ∝ 1/(n!)) からボース統計では「ε=0の準位に粒子がたくさん入る」 と言えるのはなぜですか?

この部分は流れがさっぱり分かりませんね。 申し訳ありませんでした。 「ε=0の準位に粒子がたくさん入る」という言い方が、 曖昧でよくわからなかったですね。 もし、粒子の入らない確率をボース統計とボルツマン統計と同じだと考えると、 相対的にたくさん粒子の入る確率は、ボース統計の方が大きくなります。 ということがいいたかったのです。 さらに、平均値は、ボルツマン統計の方は、有限の大きさにとどまりますが、 ボース統計の場合は発散します。


<4> BE凝縮が実験で確認されたのは1995年とありますが、 高温から低温にするだけなのになぜ 最近になってからしか確認できなかったのですか? というのは高温とありますからムチャクチャ 高温にしてから温度を下げていけばT=0の低温までにせず、 もっと手前の温度でBE凝縮を確かめかれるのでは?

私は実験のことは詳しくないので、よくわかりませんが、 おそらく、転移する温度の値が問題なのでしょう。 演習問題(P120[2])にもありますが、 Rb の場合、10 のマイナス 7 乗ケルビンが転移温度なので、 いくらいったん高温にしてもこんな低い温度をつくるのは難しかったのだと思います。

今回のポイントは、

  1. ボース粒子では積分の近似が良くなくて付加項が要ること(2点)
  2. 体積を無限大にすると、折れ曲がって、ボースアインシュタイン凝縮が起こる(2点)
  3. BE転移の物理的な意味(3点)
の3つです。 この質問は、最初のポイントの付加項が必要なことが少し分かっている感じがするので、 1+3 = 4点です。

質問. (採点結果: 3点)

どうしてε=0の準位から粒子が入っていかないのでしょうか? エネルギーが小さい方から入っていくものではありませんか?

粒子を入れて行くのに順番があるかどうか分かりませんが、 質問は、おそらく、基底状態( ε = 0 )に粒子が無限個入るのならば、 つねに基底状態に全部の粒子が入れば良いのではないか、ということでしょうか。 これは、絶対零度でなければ、励起状態にも粒子は入ります。 そうでなければ、常にエネルギーが 0 で変なことになります。

または、励起状態( ε > 0 )に粒子が入る量に限度があるのはなぜか、ということでしょうか。 説明するときは、「限度のある方を先に粒子をつめ、余りを限度のない方につめる」、 という言い方をすることが多いので、 おそらく、私も先に励起状態につめるような説明をしたかも知れません。 励起状態に入る粒子数に限度があるのは、 ボース統計特有の問題で、化学ポテンシャルが正の値が取れないことと関係があります。 あるエネギー準位に n 個の粒子が入る確率は、exp[nβμ] に比例するので、化学ポテンシャルを正に出来れば、 そこに粒子がたくさん入る確率を高くすることが出来ます。 ところが、ボース粒子の場合は正にすることが出来ないので、 励起状態に入る粒子数は限度が出来てしまうのです。

ポイントがわかっているかどうか、わからないので、3点にしました。




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