質問と回答 (採点対象)

第9回 (6月14日)

この授業は質問を採点の対象にしています。 詳しくは、 ここを 見て下さい。

回答がおくれてすみません。

ホームページで公開不可、とは書いてなかったので、掲載しました。 (掲載に関して間違っていたら至急連絡して下さい。) 下線の上に私の回答があります。


質問. (採点結果: 3点)

<1>板書でμ= CTΔT2となり (∂μ/∂T)V->0 (T->TcでΔT2->0) となることはわかるのですが、  どうやって∂2μ/∂T2 = 2C を出したのかがわかりません。

まず、私の板書の書き間違えかもしれませんが、 μ = CTΔT2 ではなくて、 μ = CΔT2 が正しいです。 つまり、 C は温度によらない定数で、ΔT = T -Tc なので、 化学ポテンシャルの2階微分は 2C になります。 もし、板書が間違っていたら、混乱させて申し訳ありません。

もう少し説明すると、この計算は、基本的に T = Tc の近傍でテーラー展開しているのです。

μ(T) = μ(Tc) +μ'(Tc)ΔT +(1/2)μ''(Tc)ΔT2 + ...
ここで、 μ'(Tc) は、化学ポテンシャルの1階微分、 μ''(Tc) は、2階微分を表していて、それぞれ、温度のところに Tc を代入します。 授業でやった計算は、 μ'(Tc) = 0 で、(1/2)μ''(Tc) = C を示しています。

今回のポイントは、

  1. 化学ポテンシャルの温度の2階微分のとびの計算(2点)
  2. 圧力の粒子数の2階微分のとびの計算(2点)
  3. エントロピーのとびの計算(3点)
の3つです。 この質問は、これらのポイントが分かったのか分からなかったので、 3点です。

質問. (採点結果: 3点)

S = V(∂P/∂T)μ
にT→Tc+0での近似式 P~P0 +(Ne/V)μ を代入して
S = V(∂P0/∂T)μ +μ(∂Ne/∂T)
としたときの2項目で、なぜμを定数として外に出すことができるのかが よくわからないのですが。

記号 (∂P/∂T)μは、化学ポテンシャルを一定にして、 圧力を温度で微分するという意味です。 「化学ポテンシャルを一定にして」という意味は、化学ポテンシャルを定数と思って、 ということなので、外に出すことが出来るのです。

ポイントがわかっているかどうか、わからないので、3点にしました。


質問. (採点結果: 4点)

@10−3、例題2の 「体積Vの理想ボース気体(g=1) で@化学ポンテンシャルの温度の2階微分(粒子一定) がBE転移の前後で不連続になるのを確かめよ」 という問題で、T>Tcで2階微分のとびを求める際、 まずTを一定にしてN→Neに近づけた。  つまり
(式省略)
から出発して
(式省略)
 となりました。 そして次にNを一定にして、Tを動かし、T=Tc+△Tとして
(式省略)
 でμが△T2に比例することから、 μ= C△T2となっていました。 それでT→ TcにしたときT〜0でμ=0 となり、その1階微分(粒子一定)も(∂μ/∂T)N となるということなのですか?

その通りです。


A類題のエントロピーの温度に対する2階微分のとびを求める問題で、
     T<Tc S-=S0 
     T>Tc S+=S0-μ(∂Ne/∂T), S0 = -V(∂P0/∂T) 
からとびはS+-で与えられ -μ(∂Ne/∂T)を計算すれば良いということでした。 実際に計算してみると
    T>TcでNe= N(T/Tc)3/2だから
∂Ne/∂T = (3/2)N(T/Tc)1/2(1/Tc3/2)
= (3/2)(N/Tc3/2)(T/Tc)1/2
=> -μ(∂Ne/∂T) = -(3/2)(μN/Tc3/2)(T/Tc)1/2
  T→Tcとしたとき T=Tc+△Tとすると
(T/Tc)1/2~(1+(1/2)(△T/Tc))
=> -(3/2)(μN/Tc3/2)(1+(1/2)(△T/Tc)) ~-(3/2)(μN/Tc3/2) :とび
 となりました。
 2階微分のとびだから、 ∂2S/∂T2まで計算しなくてもいいのでしょうか。  その場合、とびが-(3/8)μN/Tc3となりました。
 あとヒントに書いてあった S =-(∂J/∂T)とJ=−PVから
S = +V(∂P/∂T)μ  となると思うのですが。

この日の授業は本当に分かりにくくて申し訳ありませんでした。

最初に後半の質問に答えておくと、ご指摘は全く正しいです。

S = +V(∂P/∂T)μ

に訂正して下さい。

前半の質問は、まず計算間違えを指摘させて下さい。
∂Ne/∂T = (3/2)N(T/Tc)1/2(1/Tc3/2)
は、ミスで
∂Ne/∂T = (3/2)N(T/Tc)1/2(1/Tc)
が正しいです。 ですから、上の私の間違えと合わせて訂正すると、 S+ の近似式は、
S+ = S0 +μ (3/2)N(T/Tc)1/2(1/Tc) = S0 +μ(3/2)(N/Tc)
となります。 そしてこれを2階微分しないといけません。 ただし、

化学ポテンシャルでなく、粒子数を一定にする

ということです。 とにかく、統計力学や熱力学で微分が出てきたら、何を一定にするかいつも気をつけて下さい。 この場合は化学ポテンシャルが温度に依存する訳です。 その依存性は、最初に求めたように CΔT2 です。 したがって、1番目の質問と同じように T -> Tc とすると、S+ -> S0 となり、温度の1階微分も連続です。 2階微分は、不連続で、そのとびは、3C(N/Tc)となります。

この人は、エントロピーのとびについて、少し分かっているとは思えるので、 1+3 = 4 点です。




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