押し売りギャラリー

流行の青い絵の売り方について思うこと。

最近(かなり前という話も)、イルカや鯨をモチーフにした青い絵が各地のギャ ラリーっぽいところで流行っている。絵が好きなので、「お気軽に〜」とか 「入場無料」とかいう文字につられて入ってしまうのだが、毎回「帰れ」みた いな感じで追い出されてしまう。原因は、多分店員と話すくせに買う気がないから だと思うのだけども、それなら「必ず買う方のみお入りください」とか、「冷 やかし厳禁」みたいに最初から書けばいいのにと思う。

前までは、学生と言うだけで「帰れ!」と言われたものだけども、最近は不況 なためか、私のような貧乏学生にまで数十万の絵らしきものを借金をしてまで 買えという。なので、最近は青い絵をみたら近づかないようにしている。

ところが、最近はキャッチセールス方式を取り入れ、 「話だけでも〜」とか、「ちょっとみるだけ〜」とか甘いことを言ってお店に 入れる手法が始まったようだ。 いざお店に入ると数十万もする絵らしきものを買わせようとして、 「店に入っておきながら買わないのは何事か!」と、キャッチバーもびっくり な手法。彼らは自称「アートプランナー」と呼んでいるらしいが、私はこの業 界を「押し売りギャラリー」と呼ぶことにしている。

ただ、毎回素直に追い出されるのは面白くないので、 そのお店が芸術に対してどんな考えを持っているかを聞いて回っている。 既に10件ぐらい回ったつもりだが、彼らの行動・主張はまるで教科書でもあるかのよ うに同じであった。

多少変化はあるが、最後の「おまえには芸術が分かってない」というのは大体 一緒。下は実際に聞いてみた質問といくつかの店員の答え。

Q:こういう青い絵は趣味ではないのだけど。
A1:好きかどうかではなくて、限定物なので買えば後で価値が上がる。 だから買っておけ。
A2:君は好きではないかもしれないが、後で子どもができたときに絶対 子どもが喜ぶ。だから買っておけ。
A3:買ってみたらそのうち好きになる。だから買っておけ。
Q:ちょっと高いと思うが。
A1:一般的にこんなものだ。お金が無ければローンの書類もある。
A2:金額は問題ではない。これは芸術だ。気にするな。
A3:限定物だから仕方が無い。車を買うより安いではないか。
Q:絵を飾るスペースが無いが。
A1:絵が好きであれば、場所は問題ではない。物置でもOK。
A2:後で大きな家を買えばよい。
Q:絵を買って飾らないのは良くないのではないか。
A1:絵が好きであればどこにあっても良い。問題は持ってるかどうかだ。
A2:今買わないと後で飾る絵も無くなる。今買っておけ。
Q:それって芸術なのか?
A1:芸術は資産の一面もある。君には価値がわからないかもしれないが、 我々が価値を保証する。
A2:飾るだけが絵や芸術ではない。問題は君が絵を好きかどうかだ。
Q:やっぱり私には必要ない。
A1:芸術はその辺のモノとは違って必要かどうかで選ぶべきではない。 君にはこの絵のすばらしさが理解できないのか。
A2:この作者は最近非常に品薄だ。今この値段でとりあえず買っておい て、要らなければ2,3年後に高値で売ればいい。きっと儲かる。
A3:君は絵はいらないというのか。ではどうやって気持ちを落ち着けた り、気分転換をするのか。
Q:結局私はこれらの絵は好きではない。絶対買わない。
A1:これらの絵は、世界中で非常に評価の高いものだ。それを理解でき ないのは芸術的センスがすこし一般から外れているのではないか。 社会人としてそれはまずい。 一般的なセンスを身につけるためにも買ってみてはどうか。
A2:自分の価値だけで物事を決めるのはいかがなものか。物事はもっと 柔軟に対応すべきであり、我々の意見も聞き入れるべきだ。
Q:帰ってよいか。
A1:君は何しに来たのか。ここは学生の来るところではない。出口はあっ ちだ。二度と来るな。
A2:ここはお店だ。それも分からないのか。まさか無料で絵を見ていこ うという気だったのか。非常識もはなはだしい。帰れ。
A3:なぜこんなに説明しても芸術が分からないのか。勉強しすぎて頭が おかしくなったのではないか。これ以上話をしても時間の無駄だ。帰れ。
A4:社会人になって、収入を得てから来い。

こんな芸術みなさんもいかが?


桜井雅史: E-mail : m.sakurai@cmt.phys.kyushu-u.ac.jp
Web page : http://www.cmt.phys.kyushu-u.ac.jp/~M.Sakurai/
Last modified: Sun Jan 13 02:23:06 2002