- 日時: 8月8日(月) 午後4:00〜
- 場所: 九州大学箱崎キャンパス理学部2号館6階 物性理論セミナー室 (2635)
- 講師: 森史 氏 (お茶の水大学)
要旨:
振動現象の周期の揺らぎに着目する。周期の揺らぎは、系の状態やノ イズの性質などに依存するため、多くの情報を含んでいると考えられる。
概日リズムを刻む体内時計や電気魚の発振ペースメーカーなど、周期 の揺らぎが小さいリズムを生み出す機構は生物系に多く存在する。その 背後には、多くの場合、同期現象が存在する。例えば、哺乳類の概日リ ズムの時計中枢であるSCNは多数の時計細胞の同期集団である。 また、SCNは光に同期する。さらに、体内の各組織の末梢時計は、 SCNからの信号に同期して活動している。
実験[1] によると、マウスの個体およびSCNの日周期活 動の開始時刻の間隔で計った周期の揺らぎは、終了時刻のそれよりも小 さい。一方、ノイズを受けた1個の位相振動子系において、1周期を位 相がチェックポイントθcpから θcp+2πまで変化したときの時間と定義すると、周期の揺らぎは θcpに依存しないことが示せる。それでは、前者は単に実験精度 に由来する誤差と言い切れるのだろうか。
我々は、ノイズを受けた位相振動子の結合系を考え、周期の揺らぎを 解析的および数値的に調べた。周期の揺らぎの大きさをθcpの関 数として求め、周期揺らぎのθcp依存性を示した。ここで導いた 理論から、周期の揺らぎと振動子間の結合様式および振動子間の同期の 程度との関係性が理解できる。以上は、郡宏氏との共同研究である。
[1] E. D. Herzog, S. J. Aton, R. Numano, Y. Sakaki and H. Tei, J. Biol. Rhythms 19, 35 (2004).