• 講演者: 田中 晋平 (広島大学 総合科学部)
  • 日時:24日 14:00 場所:大学院講義室
  • タイトル:「タンパク質結晶化における非平衡挙動」
  • 概要:
    タンパク質が結晶化する際、最安定な状態は単結晶が希薄溶液と共存した状態である。よく知られている様に、この状態を実現することは必ずしも容易 ではない。最安定状態へ至るまでの道筋には、それ以上の安定化を阻む様々な準安定状態が仕掛けられているからである。大抵の溶液はこれら準安定状態にとら えられて単結晶化できない。タンパク質分子がランダムに集合して沈殿してしまうアモルファス状態や、希薄溶液と濃厚溶液に分離する液体-液体相分離状態な どがその代表である。それら準安定状態を巧みにくぐり抜けてきた溶液が最後に直面する難関が結晶多形の問題である。タンパク質溶液からは、針状や板状の多 結晶がしばしば析出して単結晶化を阻む。このような多結晶は単結晶と隣り合って析出することもあり、結晶の安定性だけではなく、結晶成長過程がその形成の 大きな要因であることが分かる。本セミナーでは、このタンパク質結晶の多形の問題に焦点をあてて、最近の実験結果から得られた知見を議論したい。