[歴史的なこと]
1984年にShechtmanらの論文(PRL53(1951))が発表。Al-Mn合金(Mn14%含有)を溶融し、急冷したときに
得た相。逆格子空間で、正20面体の対称性を有していた(5回対称6個、3回10個、2回15個)。
回折パターンの鮮明さから、双晶であることが否定されたようだ。
しかし、通常の結晶構造では許されないので、構造に興味が持たれた。
実際の構造は、すぐに提唱されたようだ。当時、ガラス構造の例として、正20面体での
パッキングが考えられていたことによる(現在利用されているかは調べていないので、
詳細は触れないことにする)。
この話によると、正20面体のタイル(原子の集まり・クラスターを指す)
1種類で、空間を敷き詰めることはできず、
一部を潰して敷き詰めており、そのため並進対称が議論できなかった。
しかし、タイルの向きに制限(ボンドの配向秩序BOO:Bond Orientational Order)
が生じていた。具体的には、ボンドの向きが5回の回転対称性を有することなど(原子位置は
回転対称性・並進対称性持たないことに注意!)。
そこで、5回のBOO(結晶学的には、双晶等の話を持ち出さない限りは実現できない配向秩序)
を持つタイリングに興味が持たれたらしい。
そんな中で、幾何学的な興味から、Penroseタイリングが注目された。このタイリングが優れている
点は、数種類のタイルを用意するだけで、タイルを潰すことなく巧妙に敷き詰めらることで
、5回のBOOを実現できることにある。
このタイリングは非周期的に敷き詰められ、タイリングを行う際のルールから自己相似性を
持っていることが特徴である。
閑話休題。Al-Mn合金の5回対称の回折パターンから、実際の空間での構造は
、以下の様に考えられた。
・非周期的な構造をとること。
・長距離に渡る格子点の並進対称性は無いが、BOOの様な並進秩序を有していること。
そんな中、Penroseタイリングの応用となる3次元版の構造との比較がなされた。
(PRL53(2477))によると、回折ピークが一致し、強度の階層的な特徴(自己相似的な
特徴)も数次のオーダーまで一致したそうだ。
非周期的・ボンド配向秩序・自己相似性を持つ原子位置を有する結晶であることが分かった。
単純に非周期的な構造で無いので、そこの部分を強調したい気持ちがあったと思われるが、
このAl-Mn合金のような特徴を示すものを準結晶と呼ぶ。
また、特有の並進秩序を準周期的であると呼ぶ。
モデル側となるタイリングに正等性がありそうなので、こちらに話しを移す。
2次元Penroseタイリングや、その3次元版・1次元版のタイリングがあり、1次元版の代表に
Fibonacci格子がある。
この格子は、1次元であるのでボンドの配向秩序を議論できないが、
2次元Penroseタイリングから生成でき、自己相似性を受け継いでいる。
並び方は、Fibonacci列を作る無限列に従う。つまり、特定の並びが生じないと言う特徴がある
。
Penroseタイリングからでなく、Fibonacci列を直接作ることを考える。
L,Sという2つの要素を持つとすると、列を作るルールは以下のとおりである。
S→L
L→LS
つまり、SSやLLLは生じない。この列の並び方は、周期的でない・自己相似的である・
原子間の距離に上下限がある ので、準周期的であると呼ばれている。
準周期的な構造を得るために、いくつかの方法が考えられている。
そういった中で、準結晶に特有なフェイゾンと言う考えが導入される。
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