今回の講義の成績や演習の様子から、 学生にとって、今の統計力学Iの内容は範囲が広すぎると思う。 今のままでは受講生にとって、未消化の部分が多すぎる。 必修ということから考えても、内容を精選すべきであろう。 おそらく、 グランドカノニカルはIIにまわしてもそれほど問題はないと考えられる。 また、フェルミ分布とボーズ分布は、ほんの少ししかやらないので、 あまり意味が無い。 エントロピーの概念の理解と古典統計力学をもっと時間をかけて、 じっくりやるべきだ。
もしそれが出来なければ、せめて演習の時間を増やすべきだ。 現在は1コマ90分であるが、これを2コマにすれば、 かなり理解が進む。 実際、今の内容をやろうとすると、どうしても時間を延長せざる得ない。 そのため、受講生とのトラブルも多々あった様だ。 他の演習との関係もあるが、 統計力学演習を2コマに延長することを提言する。
成績に付いては大きな問題を抱えている。 つまり、演習の目的は講義の理解にあるので、 講義と独立な評価は有り得ないはずなのに、 現状では単位が切り離されているために、 形式上講義と独立に評価しなければならない。 これは、はっきり言って無理だ。 出来るのならば、講義と合せて3単位にすべきだ。 それが出来ないのならば、講義にだけ3単位を出し、 演習は単位を出さないという方法も考えられる。 とにかく、講義と独立に単位を出すのは、 演習の目的からとても難しい。
受講生のアンケートによると 1回目 は38人中25人、 2回目 は35人中7人が熱力学をもっと説明して欲しいと要望している。 統計力学は、熱力学の知識を前提にしているので、 熱力学が分からないと、修得するのは難しい。 しかしながら、統計力学の演習の時間に熱力学の説明をするのは、 無理がある。 この問題は教育課程委員会等でもっと議論をすべきであろう。
当初の演習の目的( どの様に演習をやったか? )はとても達成できなかった。 演習問題を解ける様になった受講生は少ないし、 概念的な理解には程遠い。 それは、受講生のおよそ2割が講義の単位を落としていることからもわかる。 やはり、2つの目的を考えたのは欲張りで、 チューターの方が指摘されているように( チューターに対するアンケート結果 )、 もっと狭く絞れば良かったと思う。 そうした上でもっと工夫が必要だった。
全ての問題を前の週に出し、宿題と区別を無くすべきだった。 今回のやり方は、1問は宿題として前の週に出しておき、 もう1問はプリントを配ってその場でやらせるというものである。 この方法だと、受講生は始めて見る問題なので、 質問することも出来ない。 解いている間、チューターも時間がもったいない。 従って、プリントは前の週に配っておき、それを授業時間にやらせ、 全ての問題の答え合わせを最後にやるのが最も効果的だと思う。
講義で扱った問題は出題しない方が良かった。 ノートを丸写しにするとまではいかなくても、 本当は理解していないのに、解けた気になる受講生が多い。 演習で扱う問題は、 受講生の分からないところが明らかになる問題が理想的だ。 講義で説明した問題と少しでも変える事により、 分からないところが明らかになる場合がある。 なお、教科書の問題は、解答を見ても分からないことが多いようなので、 それほど問題は無かった。
クラスは出来るだけ同じ人数に揃えるのが良い。 今回、教官に全受講生が当たるように、TAのクラスの人数を少なくし、 教官のクラスを多くしたが、それが不平等の元になった。 ( 少人数制の利点と欠点 参照。) 特に発表回数が不平等になる。 少ない人数だとすぐ回ってくるが、多人数だとなかなか回らない。 発表回数を採点の対象にしたので、これは問題だった。
2回のクラス替えで問題はなかった。 ただ、手間はかかるので、1回でも良かったかも知れない。 全くしないのは、 チューターと受講生がどうしても馬が合わない様な事が起こるので、 そういう場合に問題が生じる。 さらに、最初のクラス分けの時は、出席者を確定できないので、 クラスの人数を同数に揃えるのが難しい。 1回でもクラス替えをすれば、その不均一を直せる。
今回は、クラスの人数がバラバラだったので、 受講生もチューターも両方変ったが、もし人数が同じであれば、 チューターだけ変るという可能性もある。 チューターだけ変れば、受講生も混乱せずに済むし、 クラス分けの手間も省ける。 しかし、上で書いた人数調整は出来ない。 今回の場合は、クラス替えは、手間はかかったが、 掲示だけでスムーズに出来たと思う。