以下の利点があった。 ただし、最初の()は 受講生のアンケート でその項目を選んだ人数。 次の()は、 チューターに対するアンケートの結果 。
多人数のクラスに比べ、少人数の方が受講生は圧倒的に質問しやすい。 私もそうだが、沢山に人の前で、手を挙げて質問するのは勇気がいる。 それに対して、人数の少ないところでは、容易に質問することが出来る。 実際、今回の演習では多くの質問が出ていた。 演習の目的の1つが自主性を高めることにあるならば、 質問しやすいのは、とても好ましい。
受講生の分からない所を把握するのは、 教える方としてとても重要なポイントであるのにも関わらず、 なかなか出来ない。 特に多人数の時は、どうしても目立つ学生にばかり注意がいき、 授業についていっていない学生をフォロー出来ない。 しかし、少人数だと、その難点を克服でき、 割と楽に受講生の理解度を把握できると思う。
少人数クラスだと1対1で教えることもある程度可能である。 多人数を前にして、一斉に講義をするよりも、 1人1人の理解度に合せ、きめ細かい指導をする方が、 はるかに教育的効果は高い。 ただし、時間的な制約もあるので、少人数だからといって、 全員に個人教授出来るとは限らないとの指摘が、 チューターに対するアンケート にあった。
私自身、少人数クラスが最も良いと思われる点は、 受講生が多く発表できることである。 現実問題として、学生たちは発表しないと問題をやらない。 従って、多人数クラスで発表回数が少ない時、 毎時間小テストをやらなければならない。 自主性の観点からいっても、口頭で発表させる方が、効果が高い。
雰囲気については、人間関係をうまく築くことが、 多人数クラスより容易である点が挙げられる。 教官や大学院生であるチューターと接することにより、 研究室の窓口になりやすい。 今回はそれほどうまくいかなかったが、 授業が終わった後でもうまく人間関係を続けることが出来れば、 学生の躓きや悩みにうまく対応できる可能性もあるかも知れない。
少人数クラスは、 多人数クラスに比べ、緊張感が持続し、集中させ易い。 多人数だと、内職したり、別の事を考えたりする受講生が出てくるが、 少人数だと、物理に向かわせる事が容易である。 従って、より物理を考えさせることが出来る。 また、受講生の理解度に合せながら進めることが出来るので、 そのレベルに合わせて考えさせることが出来る。
欠点は以下の様だった。 欠点に付いては チューターのアンケート だけで、受講生にアンケートは取っていない。 従って、()はチューターのアンケート結果。
成績の評価の仕方が、欠点の中では最も大きいと考えられる。 少人数制にすると、どうしてもクラスを増やさざる得ないので、 チューターによって、評価の基準が違ってしまう。 今回は、チェックリストを作り、出来るだけ客観的に評価できる様、 つとめたが、私を除くチューター6人の内、 4人が一様でないと感じている。
しかし、この問題は、完全に客観的な評価をすることにより、 解決出来ると思う。 出席回数や発表回数、発言回数だけを、評価の対象にすれば、 誰がつけても同じ結果になるだろう。 この様な評価方法が妥当かという問題が残るが、 それは演習の成績は如何につけるべきかという、根本的な問題とつながる。 私自身は、講義と組で3単位出すべきだと思う。 それが無理ならば、演習は単位を出すのを止めれば、すっきりする。 成績に付いては、「 その他の反省と提言 」参照。
教え方に統一が取れない、 というのは私自身はそれほど欠点にはならないと考えている。 画一的な授業よりも、 個々の受講生の理解度に合った教え方の方が良い。 また、問題の解法や基礎的なところが同じであれば、 それ以上は、チューターの個性に任せても問題はないと思う。 各チューターの理解は、それぞれ大体は同じでも、 微妙なところでずれがある。 従って、自分の得意とするところを教えれば、 受講生に興味を持たすことも出来るし、有益な知識になり得る。 また、何回かクラス替えを行えば、違った考え方にも触れることが出来る。 しかし、どうしても、教え方の不均一が気になれば、 事前の打ち合わせをしっかりやるなり、 チューター用のプリントを作るなりすれば、この問題は解決するであろう。
少人数クラスをつくるためには、クラスを増やさなければならないので、 多くのチューターを必要とする。 それに見合う教官の数があれば問題はないが、 それだけ教官数を用意できない場合、TAを雇うことになる。 従って、教官が教えるのに比べ、質の低下が心配されるが、 今回はほとんど問題はなかった。 受講生のアンケートでも、チューターがTAで問題があると答えた人が、 1回目 は38人中2人、 2回目 は35人中0人だった。 チューターの人達自身も特に問題には考えていない。 講義ではないので、TAが問題を十分解ければ、 質の確保は出来るといえる。
今回、中間の時点で1回受講生にアンケートを取り、 それに沿って授業の改善を目指した。 そして、最後の時間に2回目のアンケートを取り、 その評価をはかったが、ほとんど改善されていなかった。 その原因として、クラスがたくさんあるために、 私の考えが各チューターに行き渡らなかった可能性が挙げられる。 改善しようと思った点を紙に印刷して、各チューターに配布したが、 それでは足りなかったようだ。 この点に付いては特に何らかの対策が必要だと考えられる。
最後に取ったアンケートに、暖房がなくて寒かった、 という意見が載っていた。 これは、クラスがたくさんあると、 細かいところに目がいかないという欠点を示している。
まずアンケートの結果を示す。
1回目 | 2回目 | チューター | |
受講者全員。 | 2 | 2 | 0 |
20人以上。 | 0 | 0 | |
10〜19人。 | 10 | 2 | 1 |
10人未満。 | 27 | 32 | 6 |
5〜10人。 | 26 | 31 | |
7〜9人。 | 10 | ||
5、6人。 | 21 | 2以上 | |
4人以下。 | 1 | 1 | 1以上 |
受講生もチューターも圧倒的に10人以下が良いと思っている。 特に5、6人が理想的だと考えている人が多い。 私自身は、1日3問、問題を解いて、2週に1回回ってくるという計算で、 6人がちょうど良いと思う。
今回、2回のクラス替えで教官に受講生全員当たるようにするため、 各クラスの人数を不均一にした。( どの様に演習をやったか? 参照。) これは、クラス間で様々な不平等を引き起こしたので、失敗だった。 特に発表の回ってくる頻度がクラスによってかなり違ったので、 それが1番問題だった。 上で書いたようにTAがチューターをすることにはほとんど問題ないので、 全クラス出来るだけ同じ人数にすべきだ。
少人数クラス制は、いくつか欠点もあるが、 それに勝る利点があると思われる。 従って、現在の九大物理の演習方法として有力な方法であるといえる。 ただし、欠点は何らかの考慮が必要である。 特に成績の問題は根本的な問題と絡んでいるので、 広く議論をすべきだ。
なお、私自身は、現状では講義担当者が、 講義と有機的に連動しつつ、演習を担当するのが最も良いと考えている。 しかしそれが出来ない場合には、 少人数クラス制が最も有効な方法だと結論する。